朝ドラ「あんぱん」と法窓夜話

 やなせたかしとその妻暢がモデルの連続テレビ小説の「あんぱん」見てますか?第何話か忘れましたが、崇の弟千尋が「法窓夜話」を読んでるシーンがありました。明治から大正にかけての大法学者穂積陳重の著作です。穂積陳重は東京帝国大学法学部で教鞭をとり、英吉利法律学校(今の中央大学)設立者の一人でもありました。
 法窓夜話は、私も大学時代に読んだことがありましたが、面白いと思ったのは「三百代言」の話でした。三百代言とは、諸説ありますが、代言人(弁護士)資格もないくせに訴訟を扱い、とても安く小さな事件をたくさん受任し、小銭を儲けていた者をいいます。または、ただ単に報酬の安い三流代言人をいうともされます。もちろん、資格を取れなかったので法学の素養も能力もありません。
 どれくらい安いかというと、三〇〇代言、つまり一件300文で受任していたというから、今で言えば1万円です。私は法学生ながらに「あーこんな弁護士になりたくないな」と思ったものです。
それにしても、裁判所でよくもまあ無資格だとバレなかったことか。「レインメーカー」のダニーデビートじゃあるまいし。そう言えば、私も弁護士バッヂをしないで法廷立ったとき、裁判長に「弁護士ですか?」と聞かれて裁判官壇上まで行って弁護士会身分証明書を見せたことがありました。三百代言だと思ったのでしょう。

「その他」に関連する記事

決裁が通らない!

検事に任官して最初の身柄事件であったシンナー事件は、検事として、あるいはより広く法律家として基本中の基本を学んだ事件だった。事案の詳細は忘れてしまったが、二人の若者が深夜路上で紙袋に入れたシンナー瓶を吸ってラリっていたところ、警ら中の警察官に職務質問 ...

READ MORE

初めて会ったクレプトマニア

司法修習生となって、生まれて初めての取調べは緊張した。この方は50歳位の主婦で、過去に4回ほど万引きで警察のお世話になっていて、微罪処分が3回、直近が不起訴処分だった。被害品はいつもお惣菜やお菓子などで、高くてせいぜい1000円くらいのものだった。財 ...

READ MORE

月下独酌

刑事弁護士をやってると、過ちの多くがお酒が原因かなあと感じます。8割、9割はそうかなとも思います。「もう二度とお酒は飲まない。」と固く心に誓う方もいます。その反省の情は汲みますけど、もし結婚したら結婚式があり、子供の誕生を祝う場もあるかもしれず、その ...

READ MORE

新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。 昨年,裁判員裁判がスタートし,その第一号事件で「戦車と竹やり」と評されたように,裁判員裁判では組織力に物を言わせる検察と”家内工業”の弁護士の力の差は歴然としておりますが,「戦車対戦車」を目指して昨年9月に開設し ...

READ MORE

函館修習の思い出

 私は,司法試験合格後,46期司法修習生として,2年間のうち1年半を函館で実務修習を受けました。修習明けには検察官に任官して東京地検に配属となったのですが,その新任検事時代,怖い上席検事の口癖が,「中村~!いつまで修習気分でいるんだあー!いつまでも夢 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー