公器を思う

私の趣味の一つに就寝前にDVDを見るというものがある。
歴史ものが好きで,これまで織田信長,西郷隆盛,新撰組,大村益次郎などを扱った大河ドラマなどを見たが,就寝前に,しかもベッドに横になって見るのが好きである。
DVDプライヤーは小型のもので,それをベッド隅に45度縦にして置くと,枕に頭をもたれた姿勢にあんばいが良く,私はいつもこれである。
いつの間にか眠ってしまって,つけっぱなしのDVDを妻に咎められることも時にはあるが,何よりの睡眠薬であり,楽しみである。

今見ているのは,「篤姫」である。
大河ドラマ放映当時は見る暇もなかったが,最近,AMAZONでDVDボックスを買い,香取慎吾の新撰組に飽きたので,見始めた。
篤姫はここで改めてご案内するまでもなく,薩摩島津家の分家今泉家の姫で,島津藩主であった賢公島津斉彬の養女となり,あっという間に第13代征夷大将軍徳川家定の正室となった運命のお方である。
大河ドラマでは宮崎あおいが演じ,これがどうしてなかなか良い。

今で言えば,なんと言うか,地方の有力政治家の娘が総理大臣のファーストレディになるようなもの,いや,違うかな??
いずれにしても,当時としては考えられない大抜擢であったし,運命のいたずらというか,幕末の国難時を背景とした政略結婚の側面もあったかもしれないけど,篤姫の覚悟良く,激動の歴史の流れに身を任せてしまうのです。

信じられない思いは,篤姫の両親にこそ一層強く,「於一(おかつ),於一」と呼んでいた,お転婆だが可愛いわが娘が,いつの間にか,遠い,手の届かない,将軍家の正室となってしまう運命のいたずらに,喜ばしくも寂しい複雑な思いが,父そして母の胸をよぎるのである。
それを篤姫の父島津忠剛役の長塚京三と妻お幸役の樋口可南子が見事に演じている。
お幸が言う,「あの子は,私たちが一時,天から預かったものかもしれぬな」と。

親が子を思う気持ちには様々なものがあると思うけど,子が,一個人の人間としての親をいつの間にか超えて,万民にとって大切な存在,つまり「公器」となったとき,ある種,畏敬の念を込めてこのお幸や忠剛の胸中に達するのではないだろうか。

わが子,そして,わがアソシエイトも,そんな「公器」になって欲しいと思った。

(中村)

「司法制度」に関連する記事

法廷で無断録音,ネットで公開

今日は「裁判の公開」について考えてみましょう。 威力業務妨害事件をめぐる大阪地裁の法廷でのやり取りが無断録音され,動画サイト「ユーチューブ」で半年以上にわたり公開されていることがわかった。録音を原則禁じた裁判所法に触れる疑いがあり,地裁は削除を求める ...

READ MORE

示談の利益を奪う千葉地検の事件処理

千葉地検刑事部では,ここ最近,痴漢等の条例違反事件で,送検時の在庁略式罰金処分が目立つ。 在庁略式は,従前,住居不定の者など,のちに出頭確保が困難な者や罰金命令が郵送で届かない者について行われる慣行であった。 それが,千葉地検刑事部では住居のしっかり ...

READ MORE

「自分がやった」殺人の夫をかばった妻、不起訴

今日は「犯人隠避」に関する記事です。 東京地検立川支部は4日、東京都町田市、無職O容疑者(48)を殺人罪で東京地裁立川支部に起訴した。起訴状などによると、O容疑者は今年1月、八王子市のマンションの一室で、この部屋に住む男性(当時63歳)の首を両手で絞 ...

READ MORE

なぜ共犯事件では弁護士は検事より弱いか(1)

捜査妨害と利益相反について考えましょう。 私が検事だったころ、こういうことがよくありました。 5人を逮捕した暴力団による共犯事件ですが、全員否認、全員に同じ一人の弁護士がついていた事件です。 複数の被疑者に一人の弁護士がつくことはよくあることでした。 ...

READ MORE

薬物依存者等に対する刑の一部執行猶予制度について

弊所では,覚せい剤,大麻,麻薬などの薬物事件を多数担当しています。現在の日本の刑事司法においては,薬物の使用や所持といった薬物事件の初犯者であれば,起訴されて裁判所で審理を受ける場合でも,懲役1年6月,執行猶予3年といった刑が科され,社会復帰できるこ ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー