確定記録の開示に関する最高裁決定

平成27年10月27日,最高裁第2小法廷で,刑事確定訴訟記録法4条1項ただし書、刑訴法53条1項ただし書にいう「検察庁の事務に支障のあるとき」と関連事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合に関し,重要な決定が出ました(小貫芳信裁判長)。

刑事確定訴訟記録は,誰であっても閲覧請求ができます(刑事確定訴訟記録法4条1項)。しかし,「検察庁の事務に支障のあるとき」(刑訴法53条1項但書)には,閲覧は認められません。本最高裁決定は,「検察庁の事務に支障があるとき」とは,「その保管記録に係る事件と関連する他の事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合が含まれる」と判断しました。
「検察庁の事務」という文言を狭くとらえ,裁判の執行や証拠品の処分等の検察庁自身の他の事務のことのみを指すとする考え方もありますが,それを超えて他の事件の捜査や公判への影響も捉えた点に,本決定の意義があります。
実は類似の地裁決定があります(水戸地裁土浦支決平成元年4月27日)。AとBとの共犯事件で,Aの事件は既に終結,Bの事件は継続中です。Bの弁護人は,B事件の証拠開示が認められないことから,既に終結したA事件の確定記録の中から証拠を探そうと考え,A事件の確定記録の閲覧を申請しました。これに対して,同地裁は本決定と同様に判断し,記録の閲覧を認めませんでした。本決定は,同裁判例を含む下級審判例を追認したものです。
本決定で,刑事確定訴訟記録法の証拠開示的利用が制限されることが明確になりました。弁護人の姿勢として,証拠開示の制度の拡充ないし運用の改善を訴えるとともに,正攻法での証拠開示に力を入れる姿勢が求められているというべきでしょう。

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中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

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