取り調べ可視化、全事件で実施を 民間5委員が意見書

今日は,「取り調べの可視化」に関する記事です。

刑事司法の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)特別部会の7日の会合で、民間委員6人のうち5人が、試行段階にある取り調べの録音・録画(可視化)に関し、対象を原則として全事件に広げることを求める意見書を出した。

意見書は郵便不正事件で無罪となった厚生労働省事務次官の村木厚子委員ら5人の連名。まず検察の取り調べから実施し、段階的に警察の調べに広げることを提案した(2014/3/7 21:12日本経済新聞)。

取り調べの可視化とは,検察や警察の密室での取り調べを録画・録音し、透明性を確保することをいいます。
検察による取り調べの可視化は,平成18年から試行を開始し,現在では裁判員制度対象事件であって,自白調書を証拠調べ請求することが見込まれる事件について,被疑者の取調べの録音・録画を行っています。
また,警察においても,平成20年から,裁判員制度対象事件における取調べの一部の録音・録画の試行を開始しています。
統計によると,これまで(平成20年4月~平成22年3月)の検察における録音・録画の実施件数は3791件で,このうち公判において証拠として採用された事件は51件です。また,そのなかで48件については自白の任意性が肯定され,2件については任意性が否定されています(法務省「被疑者取調べの録音・録画の在り方について~これまでの検討状況と今後の取組方針~」より)。

可視化の導入について,日弁連などは,①取調べの適正を確保し誤判の発生を防ぐこと,②裁判員制度の下における自白の任意性の判断を容易にすること,などの理由からその導入に積極的です。
一方で,捜査機関などは可視化の導入に慎重な態度を示しています。その主な理由としては,①共犯者がいる事件などの場合、共犯者について供述しづらくなること,②実際に自白等の任意性が争われる事件は僅かであるにもかかわらず,莫大な公費を使用して取調べの録音・録画を実施することは割に合わないこと,などを挙げています。

取り調べの可視化は拡大し,進めるべきです。共犯者に関する取調べ・供述の場合,部分的に可視化を解除する方法なども検討して良いでしょう。また,取調べ全過程の可視化がコスト的に難しいとしても,全事件について,初動の弁録時と供述調書の読み聞かせ時の録画録音は必須だと思います。

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代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

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