「殺してほしい」と言われた…父絞殺の長男

今日は,「介護問題」に関する記事です。

北海道中標津町で21日、無職Mさん(83)が自宅で絞殺された事件で、殺人容疑で逮捕された長男(57)が、道警中標津署の調べに対し、「介護で疲れて、首を絞めた」と供述していることがわかった。

同署は動機を慎重に調べている。

長男は「父親から『これ以上迷惑かけるわけにはいかない。殺してほしい』と言われた」とも供述しているという。

中標津署や中標津町によると、Mさんは認知症になり、2009年に要介護認定を受け、週2回ほど、町内の介護施設のデイサービスを利用していた。夜に徘徊することもあり、当初は長男が夫婦で世話をしていた。長男は約2年前に妻と死別後、仕事を辞め、1人で介護をしていた(2014年1月23日11時56分 読売新聞)。

近年,介護疲れに伴う事件が後を絶たちません。介護の疲れやストレスは一人で抱えるには重過ぎるものであり,本件も,介護の疲れから起きた悲劇的な事件であるといえます。
殺害を依頼されたという容疑者の話が真実であれば,同情を禁じ得ません。介護の問題は,高齢化社会の問題を抱える日本において,国家全体で取り組むべき課題です。現在,介護サービスの拡充や,高齢者の医療費の全額負担等,官民一体となってさまざまな取り組みがなされていますが,それでも未だ十分とはいえないのが実情です。その社会的なインフラの不十分さを,今回のような事件において司法がどのように量刑に反映させて良いものか,刑事裁判に携わる者として常に悩む問題です。

「刑事司法」に関連する記事

冤罪根絶めざす市民団体設立へ マイナリさん支援者ら

さて,今日は冤罪についてのお話です。 東京電力女性社員殺害事件で昨年,再審無罪となったネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)を支援してきた「無実のゴビンダさんを支える会」(解散)のメンバーらが新たな市民団体「なくせ冤罪!市民評議会」の設 ...

READ MORE

死刑事件における裁判員の苦悩

「私たちが死刑評決しました。」というタイトルのランダムハウス講談社から出ているドキュメンタリー本を最近読みました。 ちょうど私がアメリカ留学していた頃,毎日盛んにテレビで報道されていたスコット・ピーターソン事件の陪審員たちの物語です。 日本では今年か ...

READ MORE

更生保護システム

今日は「更生保護」について取り上げます。 法務省は25日までに,万引きや無銭飲食など比較的軽い罪で起訴猶予処分が見込まれる容疑者に保護観察官が面談し,社会復帰を支援する取り組みを,全国7カ所の保護観察所で10月から試行すると発表した。 7カ所は仙台, ...

READ MORE

強制起訴の社長,二審も無罪判決 詐欺事件で那覇支部

こんにちは。今日も雨がしとしとと降っています。雨の降る日は交通事故が多いなどと言いますが,その原因としてすぐに思いつくのは,路面が滑るからですよね。最近では自転車が車道を走ることも多いですが,クロスバイクやロードバイクは特に車輪が細くて滑りやすいです ...

READ MORE

「逃走罪」は適用されず 量刑に影響か

今日は,「逃走罪」に関する記事です。 S容疑者は勾留手続きを終える前に逃げ出したため刑法の逃走罪は適用されないが、逃走の事実は裁判で不利に働く可能性が高く、逃走の“代償”は負うことになりそうだ。 S容疑者が逃走した7日午後2時16分の時点で、検察は警 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー