死刑囚奪還を防ぐ…厳重警備の平田被告公判

今日は「裁判員制度」に関する記事です。

オウム真理教による3事件で起訴された元教団幹部・平田信被告(48)の裁判員裁判が16日、東京地裁で始まる。

平田被告の公判には、死刑囚が証人として出廷するため、東京地裁などは厳重な警戒態勢を敷く。

死刑囚の証人尋問は、1970年代の連続企業爆破事件の大道寺将司まさし死刑囚(65)ら数例あるが、ほとんどが収容先の拘置所に裁判官らが出向いて行われた。法務省が死刑囚の心情の安定を考慮し、拘置所外に出すことを嫌ったためだ。今回、地裁で行われるのは、「法廷でのやり取りを直接見聞きして判断する」という裁判員裁判の理念を尊重した結果とみられる。

死刑囚の逃亡や奪還などに備え、地裁と法務省、警視庁は昨年10月から警備方法を検討。尋問当日、警察官と刑務官をそれぞれ数百人ずつ動員し、死刑囚が収容されている東京拘置所(葛飾区)から地裁(千代田区)までの沿道と、地裁周辺を警備する。

地裁は、死刑囚の心情を乱さないよう、死刑囚の周囲に遮蔽板を立てて傍聴席から隠すほか、奪還を防ぐため、傍聴席前に防弾性のアクリル板も設置する。また、当日の他の刑事裁判の開廷も極力減らすという(2014年1月15日10時18分 読売新聞)。

裁判員裁判とは,裁判員制度に基づき、市民が裁判員として参加して行われる裁判です。同裁判は市民の方に参加していただく以上,裁判をより迅速で分かりやすいものにすることが求められます。
記事にもあるように,これまで死刑囚に対する証人尋問は死刑囚の心情等を考慮し,拘置所内に裁判官らが出向き行われるのが慣例でした。しかし,今回東京地裁は公判廷内で,死刑囚の証人尋問を行うことを決定しました。従来の慣例とは異なり,今回敢えて裁判所がこのような方法を採用した背景には,裁判員が直接見聞きした方が,裁判をより迅速で分かりやすいものにすることができると裁判所が判断したためです。
裁判員制度は,2009年に始まったばかりのまだ課題の多い制度です。今後も,運用上の試行錯誤や議論を繰り返しながら,裁判員制度の理念に一歩一歩近づけていく必要があると考えます。

「司法制度」に関連する記事

大阪地検公判部長・副部長は何をしていた?

郵便不正事件に絡んだFD改さん疑惑報道を見るにつけ,大阪地検公判部の部長・副部長は一体何をしていたのかと思います。 報道によれば,この事件の公判担当検事が特捜部副部長を庁舎に呼びつけて,故意による改ざんの可能性があると直訴したというではないですか。 ...

READ MORE

郵便不正事件で「公訴権乱用論」適用か

【改ざん事件 調書開示命令】― 郵便不正・元係長公判「公訴棄却の余地」 郵便料金不正事件で虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた元厚生労働省係長,上村勉被告(41)の期日間整理手続きで,大阪地裁は31日,大阪地検特捜部の捜査資料改ざん・隠蔽事件で起訴 ...

READ MORE

なぜ共犯事件では弁護士は検事より弱いか(1)

捜査妨害と利益相反について考えましょう。 私が検事だったころ、こういうことがよくありました。 5人を逮捕した暴力団による共犯事件ですが、全員否認、全員に同じ一人の弁護士がついていた事件です。 複数の被疑者に一人の弁護士がつくことはよくあることでした。 ...

READ MORE

裁判員の心理的ケア

福島地裁郡山支部で裁判員として強盗殺人罪を審理後,「急性ストレス障害(ASD)」と診断された60代女性が,慰謝料などを求めた国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が24日,福島地裁で開かれる。女性は「このような苦しみを味わうのは私で最後にしてほしい」との思 ...

READ MORE

法廷で無断録音,ネットで公開

今日は「裁判の公開」について考えてみましょう。 威力業務妨害事件をめぐる大阪地裁の法廷でのやり取りが無断録音され,動画サイト「ユーチューブ」で半年以上にわたり公開されていることがわかった。録音を原則禁じた裁判所法に触れる疑いがあり,地裁は削除を求める ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー