パチンコで負けむしゃくしゃ、店に落書きした男
今日は,「建造物等損壊罪」に関する記事です。
警視庁町田署は16日、東京都町田市の会社員の男(35)を器物損壊容疑で現行犯逮捕した。
逃亡や罪証隠滅の可能性がないと判断し、17日夕に釈放、任意で捜査を続け、容疑が固まり次第、建造物損壊容疑に切り替えて書類送検する方針。
同署幹部によると、男は16日午前2時40分頃、同市原町田で、雑居ビル1階の飲食店のシャッターや通路のドアに、スプレー式塗料で意味不明の文字などを落書きした疑い。
飲食店の店員が落書きに気づき、逃げる男を約300メートル追いかけて取り押さえ、同署員に引き渡した。
調べに対し男は容疑を認め、「パチンコで負けたのでむしゃくしゃし、友人と酒を飲んだ後にやった」と話している。スプレー式塗料は、犯行直前に、早朝まで営業している近くの量販店で購入したとしている。
同署は、男の友人で、ともに現場にいた同市内の建設業の男(35)も、落書きを手助けしたとして、建造物損壊容疑で逮捕する方針。繁華街の原町田地区では、商店などへの落書きが絶えず、問題化しており、同署は重点的に捜査していた(2014年2月18日11時55分 読売新聞)。
「他人の建造物又は艦船を損壊した者」(刑法260条)は,建造物等損壊罪で処罰されます。「損壊」とは,建造物・艦船の物理的損壊に限らず,その効用を害する一切の行為が含まれます。建造物等の使用を全く不能にするまでの必要はありません(大判明治43・4・19)。最高裁も,公園の公衆便所の外壁にラッカースプレーで「反戦」と大書した行為につき,「本件建物の外観ないし美観を著しく汚損し,原状回復に相当の困難を生じさせたものというべきであるから」本条の「損壊」に当たるとしています(最決平成18・1・17)。
したがって,本件のように,シャッターやドアなどにスプレーで落書きする行為も,態様によっては,建造物等損壊罪で処罰されることになります。
先月も以下のような同様の事件がありました。
高1、交番にスプレー噴射で1mの落書き…逮捕
札幌市西区の琴似本通交番の外壁がスプレーで落書きされる事件があり、北海道警札幌西署は25日、同市厚別区の高校1年男子生徒(16)を建造物損壊容疑で逮捕したと発表した。発表では、生徒は24日午前10時頃、同交番の外壁に黒と青色のスプレーを縦約1メートルにわたって噴射した疑い。署員が25日未明、交番付近にいた生徒に職務質問したところ、生徒はリュックの中に黒や青色などのスプレー缶計3本を所持しており、「いらいらして、やった」と話しているという(2014年1月26日19時40分 読売新聞)。
現在,商店街などにおいて,スプレーによる落書きが問題化している地域が少なくありません。ひょっとすると,単なる落書きと,安易な気持ちで行う者が多いのかもしれません。
しかし,本罪は法定刑が「五年以下の懲役」であり,決して軽微な犯罪ではありません。本件のように,単なる落書きでは片づけられない場合があることを,行為者は肝に銘じなければなりません。