「2000万件保有」名簿屋逮捕…1万人分販売
今日は,「幇助」に関する記事です。
注文していない商品を届けて金をだまし取る「送りつけ商法」の犯行グループに約1万人分の名簿を売ったとして、京都府警は17日、広告代理店社長・I容疑者(34)(東京都豊島区)を詐欺ほう助などの疑いで逮捕した。
同社から押収したパソコンには個人や法人延べ3億件以上の情報が入っており、名簿の押収量では過去最大規模という。I容疑者は「犯罪に使われるとは知らなかった」と容疑を否認している。
発表では、I容疑者は2012年12月上旬、会社社長・H被告(35)(公判中)らに名簿を4万2000円で販売。H被告らが岡山県内の女性(84)に健康補助食品を送りつけ、2万3500円を詐取するのを手助けした疑い。
I容疑者は「名簿は実数で1000万~2000万件分はあるだろうが、多すぎて正確にはわからない」と供述しているという。「通販利用者」や「上場企業エリート」「警察官」「パチンコ愛好家」などに分類し、それぞれ名前や住所、生年月日、電話番号などを記録。1件4~25円で販売していた(2014年2月18日07時46分 読売新聞)。
「正犯を幇助した者」(刑法62条)には,幇助犯が成立します。「幇助」とは、「手伝うこと」を意味し、犯罪の実行行為以外の行為によって、正犯に加担することをいいます。
幇助犯は従犯であり,「従犯の刑は,正犯の刑を減軽する」(刑法63条)と規定されています。つまり,今回の場合,詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」(刑法246条)なので,この法定刑を上限として処罰される可能性があるわけです。
本件において,被疑者は「犯罪に使われるとは知らなかった」と容疑を否認しているようです。しかし,「幇助者が正犯の日時・場所・目的・態様等の細部まで具体的に表象していなくとも,特定の犯罪についてその内容をある程度概括的に表象していれば,幇助犯の成立のため十分である」(東京高判昭和51・9・28)とする裁判例があるように,たとえ幇助者に犯罪について具体的・確定的な認識がなくとも,何か違法な利用の仕方をするのではないかといった程度の認識でも成立します。もっとも,正犯者が合法的に利用することを具体的に幇助者に説明していた場合であって,そう信じても不思議ではないような事情が認められる場合には故意が否定される可能性も十分あります。
いずれにしても,現代社会において「情報」は価値や利便性が高く,それゆえ犯罪等に悪用されるケースが少なくありません。情報を取り扱う者は,常にそこには多様な法的リスクが存在していることを忘れてはいけません。