鳥取県、成分特定せず全国初の全面規制 危険ドラッグ条例が成立

今日は,「危険ドラッグの規制」に関する記事です。

 幻覚や陶酔作用があり、人が摂取する恐れがある危険ドラッグなどを、成分特定なしに「危険薬物」として全面規制し、罰則も設ける改正薬物乱用防止条例が14日、鳥取県議会で可決、成立した。県によると、成分によらず包括的に規制するのは全国初。11月中旬にも施行する。
 審議した委員会は規制対象があいまいだとして厳格運用を求める付帯意見をつけた。県は流入防止が主目的で、実際は使用者が救急搬送されるなど摂取と健康被害の因果関係が確認された薬物が対象になるとしている。
 改正条例は、たばこや酒類などを除き(1)麻薬や覚せい剤と同じように興奮や幻覚、陶酔などの作用があり、健康被害を及ぼす恐れ(2)人が摂取、吸引する恐れ-があれば、成分が特定されなくても危険薬物と定める。
 その上で正当な理由なく所持、使用、製造、販売することを禁止。違反者には警告や中止命令を出し、従わない場合には懲役や罰金を科す。名称や形状、販売方法などから危険薬物に当たる恐れがあるものを「知事指定候補薬物」に指定、購入・販売時に届け出を義務づける制度も導入する。
 危険ドラッグは、物質ごとに薬事法で規制されるが、構造を変えた新種がすぐに出回る。成分を特定せず規制する同法改正案が衆院に提出されるなど、法改正に向けた動きも出ている。(2014年10月14日10時56分 産経WEST)

 以前の記事で,条例による取締りが次々に新成分の薬物が次々に現れるために規制がいたちごっこ状態になっていることを紹介しました。しかし,今回,鳥取県で全国初となる,配合成分を問わない,ある種包括的な規制が行われようとしています。
 なぜこのような規制が問題になるかにつきましては,以前の記事でご紹介したとおり,憲法の規定する罪刑法定主義の大原則があるからです。この憲法の大原則がある以上,危険だから,悪いことだからという理由で,むやみに刑事責任を問うことは出来ないことになるのですが,今回の立法はこの点を「(1)麻薬や覚せい剤と同じように興奮や幻覚、陶酔などの作用があり、健康被害を及ぼす恐れ(2)人が摂取、吸引する恐れ」という限定をかけることで対処しようとしているものと考えられます。
 もっとも,このような処罰が広がりすぎるような条例は,過度の広汎性又は文言不明確故無効と評価されるおそれがあります。当該条例の施行の後,摘発された人による憲法訴訟がなされることが予想されるところです。

「司法制度」に関連する記事

尖閣諸島沖事件の顛末

東京地検は,尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、警視庁から書類送致を受けて国家公務員法の守秘義務違反容疑で捜査していた神戸海上保安部の元海上保安官起訴猶予処分とし,さらに,那覇地検も、この衝突事件で公務執行妨害容疑で逮捕され、のちに処分保 ...

READ MORE

現代の魔女裁判

魔女裁判は中世ヨーロッパにだけ存在するものか。 被告人の認識に関する事実認定を考えてみよう。 認識が問題となる密輸事案にあって,被告人の行動や外形的事実から被告人の認識を推認するという手法がとられる。 間接事実から要証事実を推認するという認定手法自体 ...

READ MORE

実刑との中間刑「一部執行猶予」3年内に施行へ

皆さん,「7119」ってご存知ですか?事故や病気で救急車を呼ぶかどうか迷っているときに,こちらに電話すると,専門の医療相談員(医師や看護師)が相談に応じてくれます。緊急性が認められた場合に,救急車により搬送してくれるのだとか。本当に救急車が必要な人が ...

READ MORE

我が恩師,渥美東洋先生

渥美東洋先生がご逝去された。 唯一,僕の恩師といえる先生である。 僕は中央大学法学部,渥美東洋先生の刑事訴訟法ゼミ21期生である。 とにかく中央大学で一番入るのが難しいゼミで,かつ,司法試験合格率がとても高いゼミだった。 渥美東洋先生の刑事訴訟法ゼミ ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー