教室で盗撮疑い、高校生書類送検 京都で条例初適用

今日は,「京都府での盗撮」に関する記事です。

 高校の教室内で同級生を盗撮したとして、右京署は24日、京都府迷惑行為防止条例違反(盗撮)の疑いで、京都市伏見区の高校3年の男子生徒(17)を書類送検した。学校や職場での盗撮行為の規制を盛り込んだ4月施行の改正条例を初めて適用した。校内での盗撮行為に条例を適用し検挙するのは全国でも珍しいという。
 書類送検容疑は6月24日午後3時15~25分の間、市内の高校の教室で、同じクラスの女子生徒(17)のスカート内をスマートフォンで撮影した疑い。
 右京署によると、男子生徒は休憩時間中に撮影音を消すアプリを使って盗撮していた。「インターネットに投稿されている盗撮画像を僕も撮れると思った」などと供述しているという。
 男子生徒は自分の席の横にバッグを置き、女子生徒がまたぐ瞬間に撮影。目撃した生徒2人がスマホを取り上げ、担任の教諭に伝えた。同日夜に学校側から右京署に申告があったという。(2014年07月24日 14時20分 京都新聞)

 今回適用された京都府迷惑行為防止条例は,今年の3月に改正案が可決され,6月に施行されたばかりでした。改正前の条例は,公衆の前での盗撮行為のみを規制し,学校や職場などは規制の範囲外とされ,法の抜け穴となっていました。盗撮などの犯罪はなにも,公共交通機関や野外に限らず,職場でも行われるのに,なぜわざわざ改正前の条例はこれを規制対象から外していたのでしょうか。その答えは,日本の最高法規たる憲法にあります。憲法35条は住居の不可侵を定め,捜索・差押には令状が必要と定めています。これは捜査機関がプライバシー侵害を伴う強制力を行使するには裁判官に事前に審査させた上で,適当とされた場合のみ許されることをしめしたもので,一般に令状主義と呼ばれています。「住居」は私的な生活空間ですので,プライバシー保護の要請が特に高い領域です。したがって,ある建物が「住居」と同視できるのであれば,プライバシー保護の要請もそれに比例して高くなるのです。ですから,証拠収集の必要があっても勝手に住居に立ち入ってはならず,事前の令状発付を要するとしたのです。
 住居はこのようにプライバシーの要保護性が高い領域です。しかし,だからと言ってその住所内で何をやってもいいという訳ではありません。ただ,プライバシー保護の要請の高い領域に対しては,規制対象に含めるか否かについて特別の配慮が必要となります。不特定多数が出入りするデパートや公共交通機関は,「住居」にあたらないといえますが,学校・職場などの特定の人しか出入りをしない場所には,特定の人々のその空間におけるプライバシー保護の要請が高く,「住居」と区別することが困難です。そのため,これを規制対象とすると憲法上問題が生じる可能性がありました。こういった事情から,改正前の条例において,規制対象に学校などを含めずにいたのです。
 しかし,現実に学校や職場などで盗撮被害が発生しているのにこれを処罰できないのでは制度として欠陥品であると言えます。そこで,改正前は,警察・検察が協議し,学校なども多くの人が出入りするという点で「公衆の目に触れるような場所」に含まれるというように条文の解釈により適用範囲を拡大したり,別の公の場における盗撮行為にしぼって起訴するなどして,この問題点に対処していました。このような実情や府民のアンケート調査などを受け,府議会は条例の改正に踏み切ったのでした。改正時には厳罰化も図られ,より規制が厳しくなりました。
 今回の記事はこの改正条例が実際に適用された最初の事例ですので,非常に重要であると言えます。法律が社会の実情に沿うように改正されていくことを示す記事でした。

「司法制度」に関連する記事

東日本大震災

今回の大震災で罹災された方々に心よりお見舞いと哀悼の意を捧げます。 瓦礫と化した変わり果てた町,家族を奪われ,住む家を奪われた多くの方々。 今年のお正月に新年を迎えたとき,誰がこのような惨事を予想したでしょうか。 北海道函館出身の私が報道を通じてこの ...

READ MORE

アリバイ証明で明らかになった誤認逮捕・誤認起訴

また冤罪事件です。冤罪事件はなくなることはありません。 今回は,弁護士の素晴らしい活動で,比較的早期に疑いが晴らされ,公訴取消となりました。 以下,報道記事です。 大阪府警北堺署がガソリンの窃盗容疑で男性会社員(42)を誤認逮捕した問題で,大阪地検堺 ...

READ MORE

国際指名手配について

今日は,「国際指名手配」について書きます。 国民健康保険の海外療養費をだまし取ったとして,警視庁は25日,東京都世田谷区弦巻,バングラデシュ国籍の調理師アミン・ショリフ被告(45)(詐欺未遂罪などで起訴)を詐欺容疑で逮捕した。 同庁は,同じ手口で海外 ...

READ MORE

尖閣諸島ビデオ映像の流出は罪か

尖閣諸島漁船衝突事件をめぐる映像流出事件で,検察庁や警視庁が捜査を始めました。那覇地検が政治的配慮により容疑者の船長を,半ば超法規的に釈放帰国させた以上,同事件のビデオ映像は,捜査資料という性質を超えて,政治性を帯びてきます。現に,野党を問わず全面公 ...

READ MORE

海上保安官の逮捕見送り

警視庁と東京地検の合同捜査会議で,尖閣諸島衝突事件のビデオを流出させた海上保安官について逮捕が見送られたようです。 前回のコラムで「義侠心あるものはいなくなったのか」なんてつい言ってしまいましたが,いましたね。まだまだ捨てたもんではないです。

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー