高検による監督で冤罪は防げるか

【元厚労局長 起訴は誤り】―最高検 資料改ざんで検証結果

元厚生労働省局長の無罪が確定した郵便料金不正事件や大阪地検特捜部による捜査資料改ざん・隠蔽事件について最高検は24日,検証結果報告書を公表した。元局長の捜査について「逮捕の判断に問題があり,起訴すべきでなかった」と反省した上で再発防止策として特捜部が逮捕した容疑者らの取り調べの一部録画(可視化)の試行や,特捜部の独自捜査事件を高検検事長が指揮することなどを盛り込んだ【平成22年12月25日付/日経新聞/朝刊】

通常の警察捜査事件では,「警察」という捜査機関と「検察」という捜査機関の二重のチェックが働くが,特捜部の独自捜査事件は,そのような二重のチェックが働かず権力の暴走を招く―それがこの検証結果報告に盛られた「高検検事長」による監督の狙いのようです。しかし,地検も高検も同じ検察機関であることに変わりはなく,権力の暴走抑止の効果はほとんどないでしょう。これまでも特捜事件は,高検,最高検を含む全庁によるゴーサインで進められてきました。今回の改革の違いは,高検がもう少し証拠を細かく見るということなのでしょうが,それが現実的に可能か,可能であるとしても逆にその他の高検の検察業務の停滞を招かないか,甚だ疑問が残ります。
新たな「予審」類似制度の導入によって裁判所の関与を認めるか,米国のような大陪審制度の検討も選択肢に含めるべきでしょう。

「司法制度」に関連する記事

明日のジョー

山Pこと山下智久主演の実写版「明日のジョー」の中で、香川照之演ずる丹下段平がいいことを言ってた。 正確には忘れたけど、こんな感じ。 「明日」っていうのはよ、格好だけの薄っぺらい毎日を送ってる奴には永遠に来ないんだ。 「今日」という1日を、汗と泥にまみ ...

READ MORE

無罪判決を破棄、組幹部に懲役20年 大阪高裁

今回は,前回に引き続き「裁判員制度」に関する記事です。 神戸市で2007年、配下組員を指揮し指定暴力団山口組系組長を刺殺したとして、組織犯罪処罰法違反(組織的殺人)の罪に問われた山口組山健組幹部 I被告(64)の控訴審判決で、大阪高裁は17日までに一 ...

READ MORE

危険ドラッグ:成分不明 即座に有害判定できる検査

今日は,「危険ドラッグの検査」に関する記事です。  成分不明の危険ドラッグが、人体に有害かどうかを即座に判定できる検査手法を、国立精神・神経医療研究センターのチームが開発した。従来の検査キットは特定の化学物質の有無を調べるため、構造を一部変えたドラッ ...

READ MORE

国際指名手配について

今日は,「国際指名手配」について書きます。 国民健康保険の海外療養費をだまし取ったとして,警視庁は25日,東京都世田谷区弦巻,バングラデシュ国籍の調理師アミン・ショリフ被告(45)(詐欺未遂罪などで起訴)を詐欺容疑で逮捕した。 同庁は,同じ手口で海外 ...

READ MORE

オウム3死刑囚を証人尋問へ…平田被告の公判で

今日は「オウム事件」の話です。 オウム真理教の目黒公証役場事務長拉致事件などで起訴された元教団幹部・平田信まこと被告(48)の公判前整理手続きが17日,東京地裁であり,斉藤啓昭ひろあき裁判長は,井上嘉浩死刑囚(43)ら元教団幹部の死刑囚3人の証人尋問 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー