職権探知主義と前田元検事の調書採用

小沢一郎民主党元代表の資金管理団体「陸山会」の収支報告をめぐる政治資金規正法違反で,東京地裁の裁判長が職権により前田元検事が作成した被告人大久保隆規の検事調書が証拠採用されました。

刑事裁判の原則は,当事者主義といって,当事者である検事や弁護士が請求した証拠についてのみ裁判所が採否の判断をするのです。これに対し,当事者の請求に縛られずに,裁判所が真実発見のために証拠を使用して取り調べていく法制を「職権探知主義」と言います。

この前田元検事の検事調書は,同元検事の不祥事を受けて検察官が証拠請求をしていませんでした。ですから,当事者主義の原則からいうと,公判で取調べられることはありませんし,マスコミもそのように予想していたのではないでしょうか。

ところが,それを裁判所が職権により,証拠採用したのです。
もとより,当事者主義刑訴法を標榜する現行法にあっても,一部補充的に職権主義の余地を残しています。例えば,刑訴法298条2項で職権証拠調べが認められているのです。今回の前田元検事の調書を証拠採用したのは,この条文が根拠になります。

問題は,裁判所があえて職権探知主義を発動してまでも前田元検事の検事調書を採用した意図はどこにあるかです。この調書の内容は事実関係を認める内容であって,信用性はともかく任意性には問題がない調書に見受けられます。裁判所の心証が有罪に傾いているような気がします。

「司法制度」に関連する記事

刑事法ローヤーの35年前

恩師渥美東洋先生が亡くなって,しんみりしてしまいました。 古箱をひっくり返し,恩師の思い出を探していたら,昔父に出した手紙を掘り出しました。 消印は1979年8月28日。 今から35年前の「僕」だ。札幌の予備校の寮に入り,大学受験浪人生活をしていたこ ...

READ MORE

パチンコで負けむしゃくしゃ、店に落書きした男

今日は,「建造物等損壊罪」に関する記事です。 警視庁町田署は16日、東京都町田市の会社員の男(35)を器物損壊容疑で現行犯逮捕した。 逃亡や罪証隠滅の可能性がないと判断し、17日夕に釈放、任意で捜査を続け、容疑が固まり次第、建造物損壊容疑に切り替えて ...

READ MORE

確定記録の開示に関する最高裁決定

平成27年10月27日,最高裁第2小法廷で,刑事確定訴訟記録法4条1項ただし書、刑訴法53条1項ただし書にいう「検察庁の事務に支障のあるとき」と関連事件の捜査や公判に不当な影響を及ぼすおそれがある場合に関し,重要な決定が出ました(小貫芳信裁判長)。 ...

READ MORE

ピンクパンサー逮捕・送還

銀座の宝石店の強盗傷害事件の容疑者として,国際窃盗団”ピンクパンサー”のメンバーがスペインで身柄を拘束され,日本に送還されました。 スペインと日本との間には犯罪人引渡条約は締結されておらず,外交ルートを通じての送還の実現でした。 実は,日本が現在,犯 ...

READ MORE

「リベンジポルノ」に「懲役3年」 自民、今国会提出目指す

今日は,「リベンジポルノ」に関する記事です。 自民党は9日、元交際相手らの裸の画像などをインターネット上に流出させる「リベンジ(復讐)ポルノ」問題に関する特命委員会を開き、最高「懲役3年以下」の罰則を盛り込んだ新法案の概要をまとめ、了承した。公明党や ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー