示談の利益を奪う千葉地検の事件処理

千葉地検刑事部では,ここ最近,痴漢等の条例違反事件で,送検時の在庁略式罰金処分が目立つ。
在庁略式は,従前,住居不定の者など,のちに出頭確保が困難な者や罰金命令が郵送で届かない者について行われる慣行であった。
それが,千葉地検刑事部では住居のしっかりしている者まで処分保留で釈放することなく,送検当日に在庁罰金を科している。

こうした千葉地検の法運用には,本人はもとより家族の反発が強い。
本人や家族にしてみれば,処分保留で釈放してもらい,被害者と示談が成立すれば不起訴処分となる利益がある。
誰しもが前科を嫌うものである。罰金も前科である。不起訴なら前科にならない。
幼い子供がいる妻は,子供の父が前科者になったことにショックを隠さない。
大切に子供を成人させた両親は,たった一度の過ちで子供が前科者になったことにやるせない思いを抱く。

犯行後,悔悛悔悟し,被害者に謝罪し,示談を成立させ,被害回復をして不起訴処分にしてもらう。
これは起訴便宜主義をもつ我が国検察特有の人情味のある良い制度であった。
そしてまた,こうした法運用は,被害回復にも資する。
被疑者の弁護人は示談をし,被害回復に努めるからである。
略式在庁で罰金刑に処せられた場合,被疑者は刑が確定したことで被害弁償に消極的になる。
その結果,被害回復されるケースが少なくなり,被害者は泣き寝入りとなるのである。

被害者とともに泣く検察ではなかったか。
被疑者の更生を願う検察ではなかったか。
出世を考え,監査で釈放未済を指摘されたくないのか。
罰金刑を増やして点数稼ぎをしたいのか。
それとも国庫を潤して国家に経済的に貢献したいのか。

形式的な必罰主義は,古き良き検察の終焉を意味する。

「司法制度」に関連する記事

刑事法ローヤーの35年前

恩師渥美東洋先生が亡くなって,しんみりしてしまいました。 古箱をひっくり返し,恩師の思い出を探していたら,昔父に出した手紙を掘り出しました。 消印は1979年8月28日。 今から35年前の「僕」だ。札幌の予備校の寮に入り,大学受験浪人生活をしていたこ ...

READ MORE

国際指名手配について

今日は,「国際指名手配」について書きます。 国民健康保険の海外療養費をだまし取ったとして,警視庁は25日,東京都世田谷区弦巻,バングラデシュ国籍の調理師アミン・ショリフ被告(45)(詐欺未遂罪などで起訴)を詐欺容疑で逮捕した。 同庁は,同じ手口で海外 ...

READ MORE

裁判員の心理的ケア

福島地裁郡山支部で裁判員として強盗殺人罪を審理後,「急性ストレス障害(ASD)」と診断された60代女性が,慰謝料などを求めた国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が24日,福島地裁で開かれる。女性は「このような苦しみを味わうのは私で最後にしてほしい」との思 ...

READ MORE

明日のジョー

山Pこと山下智久主演の実写版「明日のジョー」の中で、香川照之演ずる丹下段平がいいことを言ってた。 正確には忘れたけど、こんな感じ。 「明日」っていうのはよ、格好だけの薄っぺらい毎日を送ってる奴には永遠に来ないんだ。 「今日」という1日を、汗と泥にまみ ...

READ MORE

適塾としてのNICDサマーアソシエイト制度

NICDでは,創設以来,サマーアソシエイト制度を実施していて,これまでに確か18人ほどのOBを送り出しています。 4大等の同種制度と違って,研修期間は比較的長く,第1期などは丸々2か月間,最近でも2週間となっています。 しかも,NICDのサマーアソシ ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー