「戦車 対 戦車」

平成21年5月,裁判員裁判が始まりました。
それまでの数年間,検察庁は,国家的プロジェクトとして組織的に裁判員裁判対策に取り組んでいました。それに対し,相変わらず個人商店のままの刑事弁護人との闘いは,「戦車 対 竹槍」に例えられる状況にありました。

このような状況を打開し,少なくとも「戦車 対 戦車」のレベルにまで刑事弁護の能力を高めようと設立されたのがNICDです。

そして,その真価を発揮する機会がようやく訪れました。
NICDが初めて臨む裁判員裁判。NICDの第1号裁判員裁判の公判がいよいよ来週,3月7日から25日の予定で東京地裁で開かれます。
私が主任弁護人を務める現住建造物等放火,殺人被告事件がそれです。

平成21年9月3日発生した大田区南馬込の民家での火災。この火災で一名の女性が焼死しますが,放火殺人犯としてその女性の長男が平成22年3月3日に逮捕されました。
同年3月24日に放火殺人で起訴され,東京地方裁判所刑事第12部に係属し,約1年あまりの公判前整理手続を経ての本番です。

冤罪を訴えている完全否認事件であり,裁判員裁判始まって以来最大の検察と弁護士の激突となるでしょう。
「戦車 対 竹槍」ではなく,「戦車 対 戦車」の激突です。
NICDの裁判員裁判初陣となるこの事件で,必ず無罪を勝ち取り,無辜の青年を国家刑罰権の恐怖から救い出します。

「司法制度」に関連する記事

小向さんの逮捕罪名について

小向美奈子さんに対して,覚せい剤の譲り受け事実で警視庁が逮捕状の発付を受けたということですが,報道によると,その逮捕罪名が覚せい剤取締法違反ではなく,麻薬特例法違反のようです。これはどういうことか? 麻薬特例法は,覚せい剤取締法や麻薬取締法などの特例 ...

READ MORE

ロンドンからのたより

部屋の片づけをしていたら,懐かしい手紙を発見しました。昔,16年前になりますが,検事のときに行政官短期在外研究で英国ロンドンに滞在して調査研究していたときに,所属庁であった名古屋地検刑事部に送った手紙です。 ——— ...

READ MORE

なぜ共犯事件では弁護士は検事より弱いか(1)

捜査妨害と利益相反について考えましょう。 私が検事だったころ、こういうことがよくありました。 5人を逮捕した暴力団による共犯事件ですが、全員否認、全員に同じ一人の弁護士がついていた事件です。 複数の被疑者に一人の弁護士がつくことはよくあることでした。 ...

READ MORE

海上保安官の逮捕見送り

警視庁と東京地検の合同捜査会議で,尖閣諸島衝突事件のビデオを流出させた海上保安官について逮捕が見送られたようです。 前回のコラムで「義侠心あるものはいなくなったのか」なんてつい言ってしまいましたが,いましたね。まだまだ捨てたもんではないです。

READ MORE

特別公務員職権濫用罪の成否は?

今回のFD改ざん事件について,前田検事が故意を認める供述を始めたとの報道がなされています。 報道を前提にすれば,村木氏の逮捕着手前に既に前田検事はFDの最終更新日が6月1日であったことを知っていながら,これを事件決裁である着手報告の際に上司に報告しな ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー