発砲警察官に殺人罪は成立するか

報道によると,奈良県警の警察官が逃走車両に発砲し、助手席の男性が死亡し特別公務員暴行陵虐致死罪などで起訴されていた(付審判請求事案)事件で,訴因変更により殺人罪も審理することになったようです。裁判員裁判です。
窃盗事件で逃走した車両が、警察車両に挟まれたところに警察官3人が計8発を発砲。助手席の方が死亡したとのことです。

法律的には興味深い論点が含まれています。警察官が運転手を狙って発砲した(運転手に対する未必の故意あり)が助手席の人に当たって死亡した場合,殺人の構成要件に該当します。しかし,運転手に発砲する必要があって正当な職務であると認められる場合,違法性に関する錯誤の問題が出てきます。助手席の人に発砲する必要性は認められないので,その死亡に関して違法性は認められるでしょう。しかし,助手席の人を狙ったのではなく,運転手を狙ったとするなら,責任論において,責任故意が阻却される可能性が出てきます。こんな複雑な法律上の争点を抱えた事案が裁判員裁判に馴染むとは思えませんが…

「司法制度」に関連する記事

実刑との中間刑「一部執行猶予」3年内に施行へ

皆さん,「7119」ってご存知ですか?事故や病気で救急車を呼ぶかどうか迷っているときに,こちらに電話すると,専門の医療相談員(医師や看護師)が相談に応じてくれます。緊急性が認められた場合に,救急車により搬送してくれるのだとか。本当に救急車が必要な人が ...

READ MORE

刑事弁護士(Criminal Defense Lawyer)とは

刑事弁護士(Criminal Defense Lawyer)とは何者か。 刑事弁護士が扱う刑事事件は、最後は「和解」でお茶を濁す民事事件とは異なる。 執行猶予か,それとも実刑か。懲役16年か,それとも無罪か。ときには、死刑か,それとも無罪か。 そうし ...

READ MORE

裁判員の心理的ケア

福島地裁郡山支部で裁判員として強盗殺人罪を審理後,「急性ストレス障害(ASD)」と診断された60代女性が,慰謝料などを求めた国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が24日,福島地裁で開かれる。女性は「このような苦しみを味わうのは私で最後にしてほしい」との思 ...

READ MORE

企業秘密の漏洩、未遂も刑罰 海外流出防止に重点

今日は,「不正競争防止法の見直し」に関する記事です。  経済産業省は企業の営業秘密の漏洩を防止するため「不正競争防止法」を見直す。情報の取得に失敗した未遂罪も刑事罰の対象にするほか、海外に情報を流した場合は「15年以下」の懲役とし、現行の「10年以下 ...

READ MORE

東日本大震災

今回の大震災で罹災された方々に心よりお見舞いと哀悼の意を捧げます。 瓦礫と化した変わり果てた町,家族を奪われ,住む家を奪われた多くの方々。 今年のお正月に新年を迎えたとき,誰がこのような惨事を予想したでしょうか。 北海道函館出身の私が報道を通じてこの ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー