取調べでの誘導は違法か(その2)

【検事,誘導で調書確認】―大阪地検録画 知的障害者に

大阪府警に現住建造物等放火などの容疑で逮捕・送検された男性(29)に知的障害があり,物事をうまく説明できないのに,男性が取り調べで詳細な犯行状況や謝罪の言葉を述べたとする「自白調書」を大阪地検堺支部の男性検事(41)=当時=が作成していたことがわかった。朝日新聞が事件関係者を通じ,同支部が取り調べの様子を撮影・録画したDVDを分析。何度も説明に詰まる男性に対し,検事が調書の内容に沿うように事実上誘導しながら確認する場面が残されていた。【平成22年1月20日付/朝日新聞/朝刊】

この問題は,知的障害者の被疑者取調べに限ったことではなく,子供が目撃者・被害者である場合の参考人取調べについても同じことが言え,また,外国人被疑者の通訳付き取調べでも同じような問題が起こり得ます。
大阪地検堺支部では,今回の知的障害をもった被疑者の供述の正確性・任意性・信用性が問題となり得るとの問題意識があったからこそ,DVD録画を試みたのでしょう。適切な対応であったと思います。

問題は,このようなDVD録画があったにもかかわらず,起訴されてしまったことです(後に公訴取消しを行ったようですが)。起訴・不起訴の判断の際にDVD録画の検証が十分ではなかった疑いがあります。前にもコラムで述べましたが,取調べ方法としての「誘導」が問題ではないのです。「誘導」しないと話せないような被疑者供述を信用性あると判断して起訴したその判断が問題なのです。

「司法制度」に関連する記事

「戦車 対 戦車」

平成21年5月,裁判員裁判が始まりました。 それまでの数年間,検察庁は,国家的プロジェクトとして組織的に裁判員裁判対策に取り組んでいました。それに対し,相変わらず個人商店のままの刑事弁護人との闘いは,「戦車 対 竹槍」に例えられる状況にありました。 ...

READ MORE

刑事弁護士(Criminal Defense Lawyer)とは

刑事弁護士(Criminal Defense Lawyer)とは何者か。 刑事弁護士が扱う刑事事件は、最後は「和解」でお茶を濁す民事事件とは異なる。 執行猶予か,それとも実刑か。懲役16年か,それとも無罪か。ときには、死刑か,それとも無罪か。 そうし ...

READ MORE

死刑囚奪還を防ぐ…厳重警備の平田被告公判

今日は「裁判員制度」に関する記事です。 オウム真理教による3事件で起訴された元教団幹部・平田信被告(48)の裁判員裁判が16日、東京地裁で始まる。 平田被告の公判には、死刑囚が証人として出廷するため、東京地裁などは厳重な警戒態勢を敷く。 死刑囚の証人 ...

READ MORE

「リベンジポルノ」に「懲役3年」 自民、今国会提出目指す

今日は,「リベンジポルノ」に関する記事です。 自民党は9日、元交際相手らの裸の画像などをインターネット上に流出させる「リベンジ(復讐)ポルノ」問題に関する特命委員会を開き、最高「懲役3年以下」の罰則を盛り込んだ新法案の概要をまとめ、了承した。公明党や ...

READ MORE

ロンドンからのたより

部屋の片づけをしていたら,懐かしい手紙を発見しました。昔,16年前になりますが,検事のときに行政官短期在外研究で英国ロンドンに滞在して調査研究していたときに,所属庁であった名古屋地検刑事部に送った手紙です。 ——— ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー