犯人蔵匿罪

徳島県警は10月20日、2001年の徳島市の父子殺害事件で指名手配し,ポスターを作って行方を追っていたK容疑者(52)が、岡山市で19日に死亡したと発表した。
 
岡山県警によると、K容疑者とパート従業員の女性(67)は,岡山市内の飲食店で知り合い,約10年前から同居していた。
同居女性は聴取に「偽名とは分かっていたが、K容疑者とは知らなかった。職には就いていなかった」と説明したという。
また,5年前、警察官が自宅を訪問した際,女性は「一人暮らし」と答えた。
果たして,同居女性を罪に問えるだろうか。

犯人蔵匿罪の成否が問題となる。
同罪が成立するためには,単に同居していただけでは足りず,故意が必要。
具体的には,その者が罰金刑以上の刑に当たる罪を犯した者であることを知っていなければ犯罪は成立しない。
名前が小池かどうか,指名手配されているかどうか,どのような犯罪を犯したかを知っている必要はない。
「軽くはない犯罪を犯した者である」と知っていて,その者をかばった場合,犯人蔵匿罪が成立する。

その意味で,同居女性が,K容疑者が偽名を使っていたことを知っていたこと,警察に一人暮らしであると嘘を言ったことがポイントとなる。
K容疑者が何故偽名を使っていたと思ったか。
どうして警察に「一人暮らし」などと嘘をついたのかが重要である。
その男がK容疑者であったと知らなかったとしても,警察に追われている犯罪者であると薄々気づいていたとしたら,犯人蔵匿罪が成立する。

「司法制度」に関連する記事

特別公務員職権濫用罪の成否は?

今回のFD改ざん事件について,前田検事が故意を認める供述を始めたとの報道がなされています。 報道を前提にすれば,村木氏の逮捕着手前に既に前田検事はFDの最終更新日が6月1日であったことを知っていながら,これを事件決裁である着手報告の際に上司に報告しな ...

READ MORE

法相 性犯罪の罰則見直しを指示

今日は,「性犯罪の法定刑引き上げ」に関する記事です。 松島法務大臣はNHKなどとのインタビューで,性犯罪に対する刑罰について,「法定刑の引き上げを含めた罰則の在り方について早急な検討を指示した」と述べ,罰則の見直しを進める考えを示しました。 この中で ...

READ MORE

小向美奈子さんは強制退去となる?

小向美奈子さんのフィリピンでの動向が注目されています。 そして,警察が外務省に旅券返納命令の発令の要請をしたとの報道がなされました。 旅券法の第13条では長期2年以上の刑に当たる罪について逮捕状が出ている場合,一般旅券の発給をしないことができるとあり ...

READ MORE

田中角栄語録と刑事弁護

「今太閤」と呼ばれ,「日本列島改造論」で国家ヴィジョンを大衆に示し,ロッキード事件で訴追されてもなお絶大な権力を握り続けた田中角栄の語録にこんなのがあるらしい。 「人間は,やっぱり出来損ないだ。 みんな失敗する。 その出来損ないの人間を そのまま愛せ ...

READ MORE

危険ドラッグ:成分不明 即座に有害判定できる検査

今日は,「危険ドラッグの検査」に関する記事です。  成分不明の危険ドラッグが、人体に有害かどうかを即座に判定できる検査手法を、国立精神・神経医療研究センターのチームが開発した。従来の検査キットは特定の化学物質の有無を調べるため、構造を一部変えたドラッ ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー