事件と無関係の女性宅を間違って捜索…大阪府警

今日もまた「大阪府警」のお話です。

大阪府警生活環境課が6月,同府豊能町の山林を無許可で切り開いたとして森林法違反容疑などで町内の建築会社などの強制捜査に着手した際,事件とは無関係の女性(73)宅を捜索していたことがわかった。

法人登記簿に記載の同社の所在地と女性宅の地番が同じだったため,関連があると思い込んだという。府警は6月29日,女性に謝罪した。

府警によると,同社が同町内に所有する山林を勝手に伐採しているなどとする情報が府から寄せられ,内偵捜査。同社の法人登記簿に記載されていた所在地の不動産登記簿を調べたところ,女性宅になっていた。

府警は女性宅を事前に視察。同社の看板はなかったが,同社と関係があると判断して捜索令状を取り,6月1日,約30分捜索した。

女性が捜索時に「無関係」と訴えたため,府警が法務局などに確認すると,山間部では宅地などの「耕地」と,山林や原野の「山地」で地番の重複があることが判明。同社が設立された2009年には,同社は原野,女性宅は宅地として,同じ地番になっていた(2013年7月1日14時05分 読売新聞)。

皆さんご存知の通り,捜査機関は,裁判官が発付する令状がなければ捜索をすることができません。捜索は,捜索場所に住んでいる人の平穏な生活やプライバシー権を脅かすものなので,憲法上保障された国民の人権を保護するために,事前に裁判官による審査が行われる必要があるのです(憲法35条,刑事訴訟法218条1項)。

ですが,今回の事件で,大阪府警の捜査官は,裁判官が事前に審査していた「捜索すべき場所」とは,全く無関係の女性の民家を捜索してしまいました。このような捜索が行われるに至った原因は,どのような点にあると考えられるでしょうか。

まず,捜索許可状の発付を受けるための事前の内偵捜査が形式的に行われたにすぎず,捜索先行の捜査が行われた点が考えられます。捜索許可状を得るために,捜査官は「捜索すべき場所」,「身体」,「物」を特定する必要があります。たとえば,「場所」であれば,外観・表札等の特定できる物の写真撮影,「身体」であれば,住民票・免許証写真を取得し,出入りしている人と一致しているという写真撮影,「物」であれば,その物の写真撮影という方法による内偵捜査が考えられます。同時に,被疑事実との関連性も裏付ける必要があります。たとえば,建築会社の役員名簿,従業員名簿を調べ,当該名簿に女性の名前が記載されていなければ,過去の年金納付状況や戸籍,原戸籍等を調査することで,女性やその家族と建築会社との関連性を裏付けます。

もっとも,本件では女性と建築会社の関連性を裏付けることはできなかったはずです。その場合でも,「同社と当該女性との関連性は現時点では不明だが,その状況を明らかにするため捜索差押令状の発付を得て明らかにする必要性がある。」と記載して令状の発付を求めれば,比較的簡単に令状の発付が得られてしまうのが現状なのです。令状の発付を得てから,被疑事実と本来関連性のない女性宅を捜索してしまったために,今回の問題が生じたと言えそうです。

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中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

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