望ましい検事のあり方

年末に検事正が検事部屋を巡回している。
熱心に仕事をしている新任検事がいた。
検事正は,新任検事に「何をしている。」と聞く。
すると新任検事は「事情聴取の呼出し手続です。」と答える。
すると,検事正は,いきなり
「馬鹿め!」と怒鳴った。

新任検事はなぜ怒られたのかわからず,検事正の部屋に行って理由を聞いてみた。

「どうして,私が馬鹿なのですか。」
すると検事正は,この若い新任検事にこう言った。
「今日は12月の25日だ。呼出しのハガキを出せばすぐに届く。それには,尋ねたいことがあるから1月××日に出頭すべし,とある。受け取った人は,大み そかから正月にかけて不安のうちに過さねばならない。
そういう仕事は年が明けてからやるものだ。」
と言った。

この話は現代の話ではない。
大正時代の話である。明治大正期の大刑事弁護士花井卓蔵が「望ましい検事のあり方」の一例として挙げた実話であった。

現代がヒューマンで,戦前昔が野蛮ということはない。
「法に涙あり」と言った花井だからこそ取り上げたエピソードである。

常に民衆の味方でありたい。

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長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

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