刑罰と最新科学

【性犯罪前歴者にGPS】― 携帯義務付け 宮城県が条例検討

宮城県は22日,性犯罪の前歴者やドメスティックバイオレンス(DV)の加害者に対して,行動を警察が監視できるように全地球測位システム(GPS)の常時携帯を義務付ける条例設定の検討に入ったことを明らかにした。試案では,必要に応じて性犯罪の逮捕者からDNAの提出も義務付け,県内で性犯罪が起きた際の容疑者特定に利用するとしている。【平成23年1月23日付/日経新聞/朝刊】

私の検事としての経験から言っても,性犯罪者の多くは「繰り返します」。またDVの加害者が被害者を執拗に追い回す傾向にあることも確かです。しかし,当然のことながら,プライバシーとの関係で議論が生じますね。議論することは良いことだと思います。逮捕者全てを対象とするのか,逮捕されても嫌疑不十分だった者はどうか。一貫して冤罪を主張していた者はどうか。装着に年限はないのか,終身なのか。自発的な去勢措置の場合の免除はどうか,などなど。大いに議論すべきです。国は議論すら避けていた嫌いがあり,その意味では宮城県は一歩進んでいます。

私からのひとつの提案ですが,被疑者・被告人が自発的にGSPの装着に応じた場合に,起訴猶予ないし執行猶予とするような量刑運用はどうでしょうか?どうしてかというと,これも私の経験からですが,性犯罪者の中には,むしろ「監視して欲しい。」と思っている人も中にはいるのです。自分の性的衝動を自分ではどうしてもコントロールできない,人が見ていないと分かるとつい行為に出てしまう,そのことを自覚している人が,「監視して欲しい。」と感じるようです。一種の社会内処遇の一手段としてのGPSの活用の可能性も議論してはいかがでしょうか。

刑罰も科学技術の発展とともに多様となり,進化していくことは確かです。人権との調整は常に考え続けていかなければならず,議論の回避,思考の停止は避けなければいけません。

「刑事司法」に関連する記事

我が国の刑事裁判は今なお絶望的である

私が中央大学を卒業した頃であっただろうか、今から40年ほど前、当時の刑事法の大家であった平野龍一先生が、「我が国の刑事裁判は絶対的である。」という言葉を残された。血気盛んなその頃の私は、師匠である渥美東洋先生の教えもあって、「そんなことはない。刑事司 ...

READ MORE

犯人の証拠隠滅に弁護士が協力?

今日は「弁護士と証拠隠滅」について考えてみます。 愛知県警の警部への脅迫事件で逮捕された風俗店「ブルーグループ」の実質経営者S被告=脅迫罪などで公判中=が,別事件で勾留中の2011年夏ごろ,留置施設に接見に来た女性弁護士の携帯電話で,部下のグループ幹 ...

READ MORE

ネットなりすまし痴漢事件

今日は「インターネット掲示板でのなりすまし事件」について考えてみます。 女性になりすましインターネットの掲示板で痴漢を呼び掛けたとして,和歌山区検は29日,大阪国税局海南税務署員,I容疑者を県迷惑防止条例違反(卑わいな行為)で略式起訴した。和歌山簡裁 ...

READ MORE

「殺してほしい」と言われた…父絞殺の長男

今日は,「介護問題」に関する記事です。 北海道中標津町で21日、無職Mさん(83)が自宅で絞殺された事件で、殺人容疑で逮捕された長男(57)が、道警中標津署の調べに対し、「介護で疲れて、首を絞めた」と供述していることがわかった。 同署は動機を慎重に調 ...

READ MORE

実刑との中間刑「一部執行猶予」3年内に施行へ

皆さん,「7119」ってご存知ですか?事故や病気で救急車を呼ぶかどうか迷っているときに,こちらに電話すると,専門の医療相談員(医師や看護師)が相談に応じてくれます。緊急性が認められた場合に,救急車により搬送してくれるのだとか。本当に救急車が必要な人が ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー