高検による監督で冤罪は防げるか

【元厚労局長 起訴は誤り】―最高検 資料改ざんで検証結果

元厚生労働省局長の無罪が確定した郵便料金不正事件や大阪地検特捜部による捜査資料改ざん・隠蔽事件について最高検は24日,検証結果報告書を公表した。元局長の捜査について「逮捕の判断に問題があり,起訴すべきでなかった」と反省した上で再発防止策として特捜部が逮捕した容疑者らの取り調べの一部録画(可視化)の試行や,特捜部の独自捜査事件を高検検事長が指揮することなどを盛り込んだ【平成22年12月25日付/日経新聞/朝刊】

通常の警察捜査事件では,「警察」という捜査機関と「検察」という捜査機関の二重のチェックが働くが,特捜部の独自捜査事件は,そのような二重のチェックが働かず権力の暴走を招く―それがこの検証結果報告に盛られた「高検検事長」による監督の狙いのようです。しかし,地検も高検も同じ検察機関であることに変わりはなく,権力の暴走抑止の効果はほとんどないでしょう。これまでも特捜事件は,高検,最高検を含む全庁によるゴーサインで進められてきました。今回の改革の違いは,高検がもう少し証拠を細かく見るということなのでしょうが,それが現実的に可能か,可能であるとしても逆にその他の高検の検察業務の停滞を招かないか,甚だ疑問が残ります。
新たな「予審」類似制度の導入によって裁判所の関与を認めるか,米国のような大陪審制度の検討も選択肢に含めるべきでしょう。

「司法制度」に関連する記事

いざアメリカへ

僕が司法試験に合格したのはもうずいぶん昔になる。 合格した当時は,弁護士志望であって渉外事務所で国際案件に携わってみたいという夢があった。 あるいは,当時まだバブルの余韻もあったからなのか,ブル弁(ブルジョア弁護士)になって不動産専門弁護士!になって ...

READ MORE

大阪地検特捜部検事が証拠改ざん?

今日の朝日新聞朝刊のスクープで,元厚労省局長の郵便不正事件に関し,大阪地検特捜部の主任検事がFDの最終更新日時を改ざんしていたと報道されました。 信じられないことです。検事調書の「作文問題」とは比較にならないほどのスキャンダルだと思います。FDという ...

READ MORE

今年,苦杯を舐めた諸君へ

失敗や浪人を重ねた人間は,その底力が順風満帆の人のそれとは根本的に違います。 西郷隆盛などは二回も島流しにあって,1回目は3年間,2回目は1年半,の合計4年半も島流し・浪人をしていたわけです。 そして,小松帯刀らの働きかけで2回目の島流しから戻ったの ...

READ MORE

特別公務員職権濫用罪の成否は?

今回のFD改ざん事件について,前田検事が故意を認める供述を始めたとの報道がなされています。 報道を前提にすれば,村木氏の逮捕着手前に既に前田検事はFDの最終更新日が6月1日であったことを知っていながら,これを事件決裁である着手報告の際に上司に報告しな ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー