小沢氏捜査で「不起訴不当」議決

小沢氏の収支報告書の虚偽記載問題で,第1検察審査会は,07年分について不起訴とした東京地検の判断に関し,「不起訴不当」と議決しました。
既に,04年分と05年分については,第5検察審査会が「起訴相当」との議決を出し,これを受けて再捜査をした東京地検が再度「不起訴」としたので,現在,第5検察審査会では,二度目の「起訴相当」議決を出すか否か審議中です。その中での07年分についての「不起訴不当」議決でした。
この「起訴相当」と「不起訴不当」の違いがよく分からないかもしれません。言葉としては,「起訴すべきだ。」という意味の「起訴相当」と,「不起訴はけしからん」という意味の「不起訴不当」は同じことを言っているように聞こえるからです。しかし,法律上の効果という観点からは「天と地」ほどの違いがあります。
「起訴相当」は,これが二度続くと「強制起訴」という強力な効果が付与されているのに対し,「不起訴不当」はそのような強制起訴へのルートがないからです。
おそらく,この「不起訴不当」議決を受けた検察は,小沢氏を再聴取することなく,再度,不起訴として,07年分に関しては,事件の幕引きとなるでしょう。
ただ,この07年分は,例の4億円の「戻し」に関する虚偽記載です。4億円の「出」に関する04年,05年の虚偽記載と,「戻し」に関する07年分の虚偽記載とは,いわば,4億円という同じお金の一連の出し入れに関する行為が問題となっているのですから,今回の07年分の「不起訴不当」との,「起訴相当」よりも一段弱いメッセージは,04年,05年分の審議に対して,事実上の影響を与えるかもしれません。つまり,第5検察審査会が,なおも強気の「起訴相当」との判断を繰り返すか否かが注目されるところです。

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長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

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