押尾学裁判
押尾学被告人の裁判が佳境を迎えつつあります。
報道を見る限りでの感想ですが,次のようなことが言えます。
① 検察官は押尾被告人の事後的な偽装工作からその証言の信用性を弾劾していますが,裁判官・裁判員にかなり効果的だと思います。そこから伺われる保身と無責任さはかなり押尾被告人に不利です。
② 弁護人は,被害者が暴力団関係者との交際があり,独自の薬物入手ルートがあったことを立証しようとしていますが,やや間接的であるばかりか,執拗な被害者に対する攻撃に映ってしまっており,「死人に鞭打ち」を嫌う日本人気質を考えるとむしろマイナス効果を裁判員に与えているような気がします。
③ しかし,一方で,検察は,押尾被告人がMDMAを被害者に渡したとする点の立証については,直接的なものとしては,落ち合う前の「あれ,すぐいる?」という携帯のやりとりくらいなもので,弱いと言えば弱いです。検察はそれを補充するために,押尾被告人の過去の女性関係を立証範囲に据えて,同じように「あれすぐいる?」と以前にも薬物を渡す際に言っていたことを立証しようとしています。
④ 押尾被告人の弁解である「あれすぐいる?」とは,俺の体がすぐに欲しいか,すぐにセックスしたいか,という意味で言ったとの弁解はとても弱いです。信用されないでしょう。
⑤ しかし,もし,押尾被告人が「確かに携帯メールでMDMAの意味で『あれすぐいる?』と聞いたが,実際に会ってみると被害者が自分でMDMAを入手し,事前に用意していたので,自分のMDMAを被害者には渡さずに被害者のものを試しに使ってみた。そうしたら死んでしまった。」と,もしそのように弁解すれば,検察はかなり苦しくなると思います。