いざアメリカへ

僕が司法試験に合格したのはもうずいぶん昔になる。
合格した当時は,弁護士志望であって渉外事務所で国際案件に携わってみたいという夢があった。
あるいは,当時まだバブルの余韻もあったからなのか,ブル弁(ブルジョア弁護士)になって不動産専門弁護士!になって一儲けしたいと真顔で考えていた。
大学の研究室の先輩弁護士からは,独禁法をやる事務所だが来ないかという誘いもあったが,当時は今とは違ってどの事務所に行くかは後期修習が始まるまでに決めれば良いとの考えから,特に事務所を決めずに第46期司法修習生になった。
もちろん入所前は就職活動などせず,せっせと英語の勉強をし,アメリカとイギリスに約1か月間,一人でバックパック旅行に出かけた。
実家の親はこの旅行計画に驚き,もうこの世の別れかと言わんばかりに心配して反対したが,親心子知らずで,当時,絶対に世界を見てみたいとの思いを抱き続けてきたので,司法試験に合格した瞬間,格安航空チケットと大きな旅行バッグを買ったものだ。吉田松陰がアメリカに密航を企ててるようなワクワク感があった。
何しろ生まれて初めての海外旅行だ。とにかく見てみたい。世界を見てみたい。ただそれだけである。

出発の1週間前くらいから緊張していたように思う。
英会話は「1週間で分かる旅行英会話」みたいな本を読んでいただけ。受験英語は得意だったが,司法試験の勉強に専念していたので英語からは全く遠ざかっていた。
何とかなるさという甘い考えだった。
いよいよ出発の朝。
パスポートは持ったし,格安航空チケットも持ったし,トラベラーズチェック(懐かしい)も持ったし,準備万端。
大きなバッグを背負って,革ジャンにジーパンといういでたちだった。
意気揚々と下宿を後にしたものの,あまりにも重いバッグで,立川の下宿を出発して成田空港の駅ホームに到着した瞬間,駅ホームでバッグを床に落としてしまい,中のアフターシェーブローションMANDAMの瓶が割れて,全ての荷物が大変な匂いになってしまった。。
このフレグランスな香りとともに冒険は始まり,そして,そのMANDAMの香りが今でもこの旅行を思い起こさせるのである。

「司法制度」に関連する記事

オウム3死刑囚を証人尋問へ…平田被告の公判で

今日は「オウム事件」の話です。 オウム真理教の目黒公証役場事務長拉致事件などで起訴された元教団幹部・平田信まこと被告(48)の公判前整理手続きが17日,東京地裁であり,斉藤啓昭ひろあき裁判長は,井上嘉浩死刑囚(43)ら元教団幹部の死刑囚3人の証人尋問 ...

READ MORE

オウム裁判で番組を証拠採用、NHKが遺憾表明

今日は「マスメディアと司法」に関する記事です。 オウム真理教による3事件で起訴された元教団幹部・平田信まこと被告の初公判で、NHK番組の映像が証拠採用されたことについて、NHKの石田研一放送総局長は22日の定例記者会見で「放送以外の目的での番組使用は ...

READ MORE

薬物依存者等に対する刑の一部執行猶予制度について

弊所では,覚せい剤,大麻,麻薬などの薬物事件を多数担当しています。現在の日本の刑事司法においては,薬物の使用や所持といった薬物事件の初犯者であれば,起訴されて裁判所で審理を受ける場合でも,懲役1年6月,執行猶予3年といった刑が科され,社会復帰できるこ ...

READ MORE

裁判員の心理的ケア

福島地裁郡山支部で裁判員として強盗殺人罪を審理後,「急性ストレス障害(ASD)」と診断された60代女性が,慰謝料などを求めた国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が24日,福島地裁で開かれる。女性は「このような苦しみを味わうのは私で最後にしてほしい」との思 ...

READ MORE

我が国の刑事裁判は今なお絶望的である

私が中央大学を卒業した頃であっただろうか、今から40年ほど前、当時の刑事法の大家であった平野龍一先生が、「我が国の刑事裁判は絶対的である。」という言葉を残された。血気盛んなその頃の私は、師匠である渥美東洋先生の教えもあって、「そんなことはない。刑事司 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー