中国で日本人死刑囚の死刑執行通告

中国で日本人死刑囚の死刑執行が通告されました。
4人の日本人死刑囚の執行が通告され,うち一人は今日にも執行されるとのこと。
いずれも覚せい剤2.5キロから3キロあまりを日本に密輸しようとしたという,麻薬密輸の罪。

中国では麻薬密輸は50グラムを超えると死刑を含む厳罰が下されます。
中国刑法では347条で,麻薬密輸は50グラム以上の場合,15年以上,無期または死刑と定められています。
中国には執行猶予付き死刑判決というものもありますが,今回の日本人4名は執行猶予つきではありません。
死刑執行方法は,銃殺か薬殺ですが,最近は薬殺の方法が増えているとのことです。日本政府は,日本人の死刑執行に対して懸念を表明していますが,それはやはり,死刑は重すぎると考えられるからです。
日本でも,麻薬犯罪には厳罰が下されますが,それでも法定刑に死刑はなく,通常,2,3キロの密輸ですと,懲役10年程度です。

刑罰の重さに対する考え方は国によって当然異なるもので,アヘン戦争という屈辱的な歴史を有する中国が麻薬・ヘロインの密輸に対して厳罰であることは一定 の理解ができます。

しかし,刑事手続きにおいて,被告人の主張・防御が十分尽くされたうえでの判決であったかに関しては,問題は残っているでしょう。中国の刑事手続では,無 罪推定原則はなく,黙秘権もなく,かつ,審理は二審制です。

「司法制度」に関連する記事

小向美奈子さんは強制退去となる?

小向美奈子さんのフィリピンでの動向が注目されています。 そして,警察が外務省に旅券返納命令の発令の要請をしたとの報道がなされました。 旅券法の第13条では長期2年以上の刑に当たる罪について逮捕状が出ている場合,一般旅券の発給をしないことができるとあり ...

READ MORE

現代の魔女裁判

魔女裁判は中世ヨーロッパにだけ存在するものか。 被告人の認識に関する事実認定を考えてみよう。 認識が問題となる密輸事案にあって,被告人の行動や外形的事実から被告人の認識を推認するという手法がとられる。 間接事実から要証事実を推認するという認定手法自体 ...

READ MORE

新撰組とNICD

刑事弁護は,何よりもスピードが命である。 夜中に家族から相談電話が入り,身内が逮捕されたとの報に接したときには,当日朝には,家族面談を実施して事件見通しなどについて助言し,弁護人選任届,身柄引受書等の必要書類を作成して,検察庁刑事部の事件係に一報を入 ...

READ MORE

犯人蔵匿罪

徳島県警は10月20日、2001年の徳島市の父子殺害事件で指名手配し,ポスターを作って行方を追っていたK容疑者(52)が、岡山市で19日に死亡したと発表した。   岡山県警によると、K容疑者とパート従業員の女性(67)は,岡山市内の飲食店で知り合い, ...

READ MORE

我が国の刑事裁判は今なお絶望的である

私が中央大学を卒業した頃であっただろうか、今から40年ほど前、当時の刑事法の大家であった平野龍一先生が、「我が国の刑事裁判は絶対的である。」という言葉を残された。血気盛んなその頃の私は、師匠である渥美東洋先生の教えもあって、「そんなことはない。刑事司 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー