発砲警察官に殺人罪は成立するか

報道によると,奈良県警の警察官が逃走車両に発砲し、助手席の男性が死亡し特別公務員暴行陵虐致死罪などで起訴されていた(付審判請求事案)事件で,訴因変更により殺人罪も審理することになったようです。裁判員裁判です。
窃盗事件で逃走した車両が、警察車両に挟まれたところに警察官3人が計8発を発砲。助手席の方が死亡したとのことです。

法律的には興味深い論点が含まれています。警察官が運転手を狙って発砲した(運転手に対する未必の故意あり)が助手席の人に当たって死亡した場合,殺人の構成要件に該当します。しかし,運転手に発砲する必要があって正当な職務であると認められる場合,違法性に関する錯誤の問題が出てきます。助手席の人に発砲する必要性は認められないので,その死亡に関して違法性は認められるでしょう。しかし,助手席の人を狙ったのではなく,運転手を狙ったとするなら,責任論において,責任故意が阻却される可能性が出てきます。こんな複雑な法律上の争点を抱えた事案が裁判員裁判に馴染むとは思えませんが…

「司法制度」に関連する記事

元大阪地検特捜部長・副部長が逮捕される!犯人隠避が成立するか。

とても重苦しいニュースが入りました。 大坪元特捜部長,佐賀元副部長が逮捕されたというニュースです。 お二人とも存じ上げております。 とても悲しいニュースです。 ここで,最高検が逮捕に踏み切った犯人隠避罪の成否について考えてみます。 もちろん,最大の争 ...

READ MORE

オウム裁判で番組を証拠採用、NHKが遺憾表明

今日は「マスメディアと司法」に関する記事です。 オウム真理教による3事件で起訴された元教団幹部・平田信まこと被告の初公判で、NHK番組の映像が証拠採用されたことについて、NHKの石田研一放送総局長は22日の定例記者会見で「放送以外の目的での番組使用は ...

READ MORE

危険ドラッグ:成分不明 即座に有害判定できる検査

今日は,「危険ドラッグの検査」に関する記事です。  成分不明の危険ドラッグが、人体に有害かどうかを即座に判定できる検査手法を、国立精神・神経医療研究センターのチームが開発した。従来の検査キットは特定の化学物質の有無を調べるため、構造を一部変えたドラッ ...

READ MORE

ピンクパンサー逮捕・送還

銀座の宝石店の強盗傷害事件の容疑者として,国際窃盗団”ピンクパンサー”のメンバーがスペインで身柄を拘束され,日本に送還されました。 スペインと日本との間には犯罪人引渡条約は締結されておらず,外交ルートを通じての送還の実現でした。 実は,日本が現在,犯 ...

READ MORE

釈放理由としての「日中関係を勘案」

尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で,那覇地検が容疑者の船長を釈放しました。船長は中国政府チャーター機で本国に凱旋し,ピースサインをして英雄となりました。 とんでもない話ですが,政治問題は置いておいて,釈放根拠を考えましょう。 逮捕後の勾留は最初が10日 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー