尖閣諸島沖事件の顛末

東京地検は,尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、警視庁から書類送致を受けて国家公務員法の守秘義務違反容疑で捜査していた神戸海上保安部の元海上保安官起訴猶予処分とし,さらに,那覇地検も、この衝突事件で公務執行妨害容疑で逮捕され、のちに処分保留で釈放された中国人船長を起訴猶予にしたと発表しました。

元海上保安官の処分については,起訴猶予とした理由に合理性がありますが,中国人船長については,納得がいきませんね。というのは,検察庁は中国人船長の行為が,わざと衝突させたのではなく,「未必の故意」によるものであったことを起訴猶予の理由にしているからです。取調べ中にそのような供述が得られた訳でもないのに,なぜ「未必の故意」と断定するのでしょうか。客観的な状況も主観認定の一事情にはなり得ますが,主観は第一次的には本人供述を基に判断されるべきでしょう。でも,検察は中国人船長からその主観的事情を十分に聴取する前に彼を釈放してしまいました。

捜査を尽くし,事案を解明したうえで処分を決める,そういう当たり前の検察権の行使がこの事案ではまっとうされていません。確定的な故意なのか,未必の故意なのか,捜査を尽くしていないのに,「日中関係」を考慮して理不尽にも中国人船長を釈放してしまったのです。検察の政治的配慮が検察権行使をゆがめてしまいました。今回の起訴猶予処分の理由に「日中関係」を挙げていないのは,釈放に対する検察の後ろめたさの現れといるでしょう。

「司法制度」に関連する記事

釈放理由としての「日中関係を勘案」

尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件で,那覇地検が容疑者の船長を釈放しました。船長は中国政府チャーター機で本国に凱旋し,ピースサインをして英雄となりました。 とんでもない話ですが,政治問題は置いておいて,釈放根拠を考えましょう。 逮捕後の勾留は最初が10日 ...

READ MORE

死刑囚奪還を防ぐ…厳重警備の平田被告公判

今日は「裁判員制度」に関する記事です。 オウム真理教による3事件で起訴された元教団幹部・平田信被告(48)の裁判員裁判が16日、東京地裁で始まる。 平田被告の公判には、死刑囚が証人として出廷するため、東京地裁などは厳重な警戒態勢を敷く。 死刑囚の証人 ...

READ MORE

小向さんの逮捕罪名について

小向美奈子さんに対して,覚せい剤の譲り受け事実で警視庁が逮捕状の発付を受けたということですが,報道によると,その逮捕罪名が覚せい剤取締法違反ではなく,麻薬特例法違反のようです。これはどういうことか? 麻薬特例法は,覚せい剤取締法や麻薬取締法などの特例 ...

READ MORE

大阪地検公判部長・副部長は何をしていた?

郵便不正事件に絡んだFD改さん疑惑報道を見るにつけ,大阪地検公判部の部長・副部長は一体何をしていたのかと思います。 報道によれば,この事件の公判担当検事が特捜部副部長を庁舎に呼びつけて,故意による改ざんの可能性があると直訴したというではないですか。 ...

READ MORE

「自分がやった」殺人の夫をかばった妻、不起訴

今日は「犯人隠避」に関する記事です。 東京地検立川支部は4日、東京都町田市、無職O容疑者(48)を殺人罪で東京地裁立川支部に起訴した。起訴状などによると、O容疑者は今年1月、八王子市のマンションの一室で、この部屋に住む男性(当時63歳)の首を両手で絞 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー