大阪地検特捜部検事が証拠改ざん?

今日の朝日新聞朝刊のスクープで,元厚労省局長の郵便不正事件に関し,大阪地検特捜部の主任検事がFDの最終更新日時を改ざんしていたと報道されました。
信じられないことです。検事調書の「作文問題」とは比較にならないほどのスキャンダルだと思います。FDという「客観的証拠」の改ざん問題だからです。このような客観的証拠を改ざんされたら,何を頼りに裁判をしていいか分からなくなります。裁判が無意味になるのです。検事調書の「作文」も,客観的証拠があればこそ,「作文」であると解明できますが,客観的証拠それ自体が検事によって改ざんされたら何も解明できなくなるのです。
検事の仕事の醍醐味とは,証拠を一つ一つ地道に検証分析して真実に迫る点にあります。その証拠それ自体を自分の好きなように改ざんする検事は,一体何のために検事をやっているのでしょうか?それを検事に聞きたいです。

もう一点,指摘したいのは,この公的証明書のデータの最終更新日時という情報は,何も主任検事だけではなく,この捜査に携わっているすべての検事の関心事です。決裁官たる上司も当然関心を持っている基礎事実です。決裁官たちは,最終更新日時を6月1日と認識していたのでしょうか?それとも6月8日と認識していたのでしょうか?どのような報告をこの主任検事から受けていたのでしょうか?
6月1日と真実が記載されていた捜査報告書が存在し,弁護側に開示されていたようですが,その存在を決裁官は知っていたのでしょうか?分からないことがたくさんあります。

事態は,この主任検事の処分だけではなく,大阪地検特捜部副部長,特捜部長,大阪地検次席検事,大阪地検検事正を含めた組織の綱紀粛正に発展するでしょう。
今回の改ざん報道が事実とすれば,主任検事はもちろん逮捕起訴され,実刑判決となると思います。それほど重大な事件です。検事による暴行事件の比ではありません。最高検による徹底捜査が必要です。

「司法制度」に関連する記事

念頭に思うー近代合理主義の功罪

エマニュエル・カントに代表される近代合理主義思想にあって,「目的」と「手段」の概念的な分離は近代社会樹立にとても重要な役割を果たしていると思う。 カンティアンの神髄は,私もそうであるけど,道徳的に自立した存在である他人を「手段」にしてはならず,それ自 ...

READ MORE

「2000万件保有」名簿屋逮捕…1万人分販売

今日は,「幇助」に関する記事です。 注文していない商品を届けて金をだまし取る「送りつけ商法」の犯行グループに約1万人分の名簿を売ったとして、京都府警は17日、広告代理店社長・I容疑者(34)(東京都豊島区)を詐欺ほう助などの疑いで逮捕した。 同社から ...

READ MORE

郵便不正事件で「公訴権乱用論」適用か

【改ざん事件 調書開示命令】― 郵便不正・元係長公判「公訴棄却の余地」 郵便料金不正事件で虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた元厚生労働省係長,上村勉被告(41)の期日間整理手続きで,大阪地裁は31日,大阪地検特捜部の捜査資料改ざん・隠蔽事件で起訴 ...

READ MORE

更生保護システム

今日は「更生保護」について取り上げます。 法務省は25日までに,万引きや無銭飲食など比較的軽い罪で起訴猶予処分が見込まれる容疑者に保護観察官が面談し,社会復帰を支援する取り組みを,全国7カ所の保護観察所で10月から試行すると発表した。 7カ所は仙台, ...

READ MORE

前田検事立件のための最高検の”構図”は?

前田検事がFDデータを改ざんしたとして証憑隠滅罪で逮捕されました。 不正な公的証明書を作成したデータの最終更新日時が,2004年「6月1日」から「6月8日」に改ざんされていたということです。村木局長の関与の時期について6月初旬との構図を描いていた検察 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー