今なお続く振込詐欺被害

次のような新聞記事がありました。

米ニューヨーク市場での金取引を装った投資話で現金をだまし取ったとして,千葉県警は21日,K容疑者(40)ら男女11人を詐欺の疑いで逮捕した。

県警は1月に事務所などを捜索,押収した資料などから,K容疑者らが2008年以降,延べ1190人から計約11億円を集めたとみている。

発表によると,K容疑者らは昨年11月~今年1月,東京都町田市の無職女性(78)ら2人に「金は必ず値上がりする」などと虚偽の投資話をもちかけ,計525万円をだまし取った疑い。

11人のうち6人は容疑を認め,K容疑者ら5人は「だましてはいない」などと否認しているという(2013年5月21日19時46分 読売新聞)。

最近,警視庁が振込詐欺の新名称を募り,最優秀作品として『母さん助けて詐欺』が選ばれました。オレオレ詐欺等の不特定多数に対する詐欺行為が社会問題になってから暫く経ちますが,未だにこのような犯罪の被害に遭う方が後を絶たず,警視庁としても注意喚起のためにキャンペーンを展開したのだと思います。

今回の事件は,まだ裁判前の話ですから,本当に故意に詐欺行為をしていたかどうかは分かりませんが,未だに組織的にこのような詐欺を行うグループは確かに存在します。綿密な計画の下,足がつかないように何度も電話番号を変え,他人名義の口座を取得する等して,犯行が発覚しないように慎重に犯行に及んでおり,犯人を突き止めるまで大変な労力がかかります。他方で,犯人は少ない労力で多額の収入を得られるため,一度味を占めてしまうと,なかなか抜け出すことができません。そこで,犯罪が発覚した時には,甚大な被害が生じてしまうのです。

このような犯罪組織は,犯罪行為を繰り返すうちに欺罔行為が熟練していきますから,被害に遭う人は,詐欺ではないことを慎重に確認したつもりであっても,結局騙されてしまうということもあります。自分の理解できない話には手を出さないという堅実な態度が,犯罪被害から身を守る最善の策なのではないでしょうか。

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長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

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