犯人の証拠隠滅に弁護士が協力?

今日は「弁護士と証拠隠滅」について考えてみます。

愛知県警の警部への脅迫事件で逮捕された風俗店「ブルーグループ」の実質経営者S被告=脅迫罪などで公判中=が,別事件で勾留中の2011年夏ごろ,留置施設に接見に来た女性弁護士の携帯電話で,部下のグループ幹部と通話した疑いがあることが捜査関係者への取材で分かった。証拠隠滅を防ぐため,接見室への携帯電話の持ち込みは禁止されていた。

女性弁護士は東京弁護士会所属。捜査関係者によると,S被告が春日井署にある尾張留置施設に勾留されていた際,女性弁護士の携帯電話からグループ幹部に5回ほど 電話があり,数十秒程度,会話したという。

これに先立つ2010年6月ごろには,S被告は弁護士J被告(66)との接見で,県警警部へ脅迫電話をかけた実行犯を逃走させることを謀議。実行犯を沖縄県などに逃走させたとして,両被告は今年5月,犯人隠避容疑で逮捕された(中日新聞 2013年7月29日 )。

問題となった弁護士ご本人は,報道事実を否定されているようなので,上記記事が事実か否かはわかりません。ただ,携帯電話の発信履歴などをチェックすれば,グループ幹部と接見中に会話していたのか否かは判明するので,おそらく捜査機関は報道内容の真偽を知っているのでしょう。

グループの実質的経営者である被告人が脅迫罪で起訴されている今回の事件において,仮に報道内容が真実であり,被告人が部下のグループ幹部に電話をかけていたとすれば,口裏を合わせるなどして容易に証拠隠滅されてしまいます。このような行為を黙認していた弁護士は,犯罪者の証拠隠滅行為に加担したものであり,「基本的人権の擁護と社会正義の実現」(弁護士職務基本規程1条)という使命に反して,真相究明を困難にし,社会正義の実現を著しく妨害したものといえるでしょう。たしかに,弁護士をしていると,被疑者や被告人から頼まれ事をすることは多いです。しかし,彼らの頼みを手放しで受け入れることが,弁護士の遂行すべき職務ではないはずで,罪証湮滅に加担するなどの犯罪行為はもちろんのこと,捜査妨害は決して許されません。刑事弁護士に高い倫理観が求められる所以です。

「刑事司法」に関連する記事

実刑との中間刑「一部執行猶予」3年内に施行へ

皆さん,「7119」ってご存知ですか?事故や病気で救急車を呼ぶかどうか迷っているときに,こちらに電話すると,専門の医療相談員(医師や看護師)が相談に応じてくれます。緊急性が認められた場合に,救急車により搬送してくれるのだとか。本当に救急車が必要な人が ...

READ MORE

法廷で無断録音,ネットで公開

今日は「裁判の公開」について考えてみましょう。 威力業務妨害事件をめぐる大阪地裁の法廷でのやり取りが無断録音され,動画サイト「ユーチューブ」で半年以上にわたり公開されていることがわかった。録音を原則禁じた裁判所法に触れる疑いがあり,地裁は削除を求める ...

READ MORE

捜査機関による違法な取調べ

今日は取調べについての話です。 佐賀県弁護士会所属の男性弁護士が28日,佐賀市内で記者会見し,国選弁護人として担当している男性被告について,「佐賀地検の検事が取り調べ中,被告にカッターナイフの刃先を向けた映像が取り調べの録画記録に残されている」などと ...

READ MORE

児童ポルノとCG加工

今日は「児童ポルノとCG加工」のお話です。 コンピューターグラフィックス(CG)で児童ポルノ画像を製造し,インターネットで販売したとして,警視庁は7月11日,岐阜市正木,デザイナーT容疑者(52)を児童買春・児童ポルノ禁止法違反(提供目的製造など)の ...

READ MORE

オウム3死刑囚を証人尋問へ…平田被告の公判で

今日は「オウム事件」の話です。 オウム真理教の目黒公証役場事務長拉致事件などで起訴された元教団幹部・平田信まこと被告(48)の公判前整理手続きが17日,東京地裁であり,斉藤啓昭ひろあき裁判長は,井上嘉浩死刑囚(43)ら元教団幹部の死刑囚3人の証人尋問 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー