ユダヤの知恵

今、あるユダヤ教徒が巻き込まれた冤罪刑事事件を担当しています。この事件に携わるようになってから、ユダヤの教典タルムードやユダヤの文化・法制度に強い関心を持ち始めました。ユダヤの戒律や生活規範といったものが、古代からの知恵の集積であることが分かります。

私は刑事事件を専門にする弁護士であることから、よく次のようなことを尋ねられます。「どうして悪いことをした犯罪者を弁護する必要があるのか。」と。私はそんなときにはいつも決まりきった言葉を並べていました。「その人は無実かもしれないし、弁護士の助力を受けるのは権利だ。」と。でも、次のようなユダヤの知恵の深さの前には、私の言葉など一枚の答案用紙の重さすら感じられません。

サンヘドリン(Sanhedrin)という、ローマ帝国支配下のユダヤの最高法院では、全員一致で死刑の判決を下した場合には死刑を執行できないことになっていました。「全員一致の死刑判決でなければ」ではなく、「全員一致の死刑判決のときには」...です。どうしてかというと、「全員一致」ということは、その被告人がその裁判の中で熱心な弁護を受けられなかったことを意味するからです(「ロイヤーメンタリング」アラン・ダーショヴィッツ著、日本評論社、93頁)。

イェルサレムの丘

「刑事弁護」に関連する記事

念頭に思うー近代合理主義の功罪

エマニュエル・カントに代表される近代合理主義思想にあって,「目的」と「手段」の概念的な分離は近代社会樹立にとても重要な役割を果たしていると思う。 カンティアンの神髄は,私もそうであるけど,道徳的に自立した存在である他人を「手段」にしてはならず,それ自 ...

READ MORE

犯人の証拠隠滅に弁護士が協力?

今日は「弁護士と証拠隠滅」について考えてみます。 愛知県警の警部への脅迫事件で逮捕された風俗店「ブルーグループ」の実質経営者S被告=脅迫罪などで公判中=が,別事件で勾留中の2011年夏ごろ,留置施設に接見に来た女性弁護士の携帯電話で,部下のグループ幹 ...

READ MORE

弁護士としてのやりがい

検事と弁護士の仕事の違いで一番大きなものは何かというと、弁護士は依頼者から報酬をいただくという点だと思う。検事にもある意味「依頼者」はいる。それは、相談を持ちかけてくる警察であったり、被害者であったり、被害者の代理人弁護士であったりする。でも、検事は ...

READ MORE

望ましい検事のあり方

年末に検事正が検事部屋を巡回している。 熱心に仕事をしている新任検事がいた。 検事正は,新任検事に「何をしている。」と聞く。 すると新任検事は「事情聴取の呼出し手続です。」と答える。 すると,検事正は,いきなり 「馬鹿め!」と怒鳴った。 新任検事はな ...

READ MORE

外れ馬券代は必要経費か

今日は馬券の話です。 競馬の予想ソフトを使って大量に馬券を購入し,配当で得た約29億円の所得を申告しなかったとして所得税法違反に問われた元会社員の男性(39)に対する判決で,大阪地裁(西田真基裁判長)は23日,男性に懲役2月,執行猶予2年(求刑・懲役 ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー