会期前逮捕議員の釈放要求

民主党の石川議員が通常国会の会期直前になって逮捕されました。
これに対し,民主党小沢幹事長は,昨日,「民主主義の危機」として検察との徹底抗戦を表明しました。
今後の検察と小沢幹事長との闘争の展開ですが,次のような事態が予想されます。

A もっぱら刑事事件マターとしての攻防:
石川議員の弁護人としては,当然,国会会期直前に形式犯で現職国会議員を不当に逮捕したとして,
1.勾留に対する準抗告請求
2.勾留取消請求
3.勾留理由開示請求
などを行って抗戦していくでしょう。

金曜日深夜の逮捕ですから勾留請求は逮捕から48時間以内(刑訴204条1項)なので,本日日曜日に勾留請求が行われます。裁判官は勾留決定をするでしょうから,タイミングとしては,本日中の準抗告請求か翌日である明日の準抗告請求が考えられます。
また勾留取消請求もどこかの段階で行われる可能性があります。
勾留理由開示請求というのは,公開の法廷で被告人在廷の上で,なぜ勾留したのか,その理由を裁判官が説明する手続きです。これも可能性はありますが,その際,石川議員が在廷するかどうかは分かりません(在廷しなくても良いのです)。

B 国会対応としての攻防:
今回は会期前逮捕です。議院の許諾は不要です。特捜部はそれを狙ったとも言われています。特捜部長はそれを否定し,「緊急性」があったのでたまたまこのタイミングになったと記者会見で言っています。小沢幹事長は,「このようなやり方は民主主義国家としてあり得ない。」と怒り心頭です。
今後どうなるか。

考えられるのは,会期前逮捕議員の会期中釈放要求です。
憲法50条は不逮捕特権を定めた規定ですが,会期中は逮捕されないと定めると同時に,会期前に逮捕された場合には,議院の要求があれば会期中これを釈放しなければならない,と定めているのです。

これは,警察検察権力がこの不逮捕特権を潜脱するために,会期中ではなく,会期直前に逮捕し,拘留を継続させることによって事実上会期中の議員活動を抑圧するということがないように,会期中の釈放要求を定めたものです。
この釈放要求がなされたケースは今まで一度もありません。しかし,今回の石川議員の逮捕は,権力中枢の与党幹事長の疑惑に絡んで執行されたものです。小沢幹事長がこの手段を用いる可能性はあると思います。

それでは,具体的にはこの会期前逮捕議員の会期中釈放という手続きは,どのような手続きでなされるのでしょうか?
明日,18日に通常国会が開催されますが,その冒頭,内閣は衆議院議長に現職国会議員が逮捕されたとの通知を行います(国会法34条の2)。
そこで,民主党が多数の衆議院が石川議院の釈放を要求するためには,議員20人以上の連名で,理由を付した釈放要求書を衆議院議長に提出しなければなりません(国会法34条の3)。小沢幹事長の一声で20人はすぐに集まるでしょう。
その後,衆議院で過半数で可決されれば,検察は石川議員を釈放しなければなりません。もちろん,その場合でも検察は在宅のまま石川議員の捜査を続け,政治資金規正法違反で起訴することはできます。しかし,その場合には,4億円の原資の解明を含めた真相解明は困難になるでしょう。

果たして,小沢幹事長がこの伝家の宝刀を抜くか,しかし,もしそのようなことが行われれば,国民,世論はどう思うか。そこがカギでしょう。

C もうひとつの抗戦手段としては,指揮権発動があります。千葉法相がこれをやるとは思えず,現実味はないでしょう。

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中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

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