示談の利益を奪う千葉地検の事件処理
千葉地検刑事部では,ここ最近,痴漢等の条例違反事件で,送検時の在庁略式罰金処分が目立つ。
在庁略式は,従前,住居不定の者など,のちに出頭確保が困難な者や罰金命令が郵送で届かない者について行われる慣行であった。
それが,千葉地検刑事部では住居のしっかりしている者まで処分保留で釈放することなく,送検当日に在庁罰金を科している。
こうした千葉地検の法運用には,本人はもとより家族の反発が強い。
本人や家族にしてみれば,処分保留で釈放してもらい,被害者と示談が成立すれば不起訴処分となる利益がある。
誰しもが前科を嫌うものである。罰金も前科である。不起訴なら前科にならない。
幼い子供がいる妻は,子供の父が前科者になったことにショックを隠さない。
大切に子供を成人させた両親は,たった一度の過ちで子供が前科者になったことにやるせない思いを抱く。
犯行後,悔悛悔悟し,被害者に謝罪し,示談を成立させ,被害回復をして不起訴処分にしてもらう。
これは起訴便宜主義をもつ我が国検察特有の人情味のある良い制度であった。
そしてまた,こうした法運用は,被害回復にも資する。
被疑者の弁護人は示談をし,被害回復に努めるからである。
略式在庁で罰金刑に処せられた場合,被疑者は刑が確定したことで被害弁償に消極的になる。
その結果,被害回復されるケースが少なくなり,被害者は泣き寝入りとなるのである。
被害者とともに泣く検察ではなかったか。
被疑者の更生を願う検察ではなかったか。
出世を考え,監査で釈放未済を指摘されたくないのか。
罰金刑を増やして点数稼ぎをしたいのか。
それとも国庫を潤して国家に経済的に貢献したいのか。
形式的な必罰主義は,古き良き検察の終焉を意味する。