郵便不正事件で「公訴権乱用論」適用か
【改ざん事件 調書開示命令】― 郵便不正・元係長公判「公訴棄却の余地」
郵便料金不正事件で虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた元厚生労働省係長,上村勉被告(41)の期日間整理手続きで,大阪地裁は31日,大阪地検特捜部の捜査資料改ざん・隠蔽事件で起訴された前特捜部長 大坪弘道被告(57)や元主任検事,前田恒彦被告(43)ら6人の供述調書を証拠開示するように検察側に命じた。決定理由で横田信之裁判長は「別の事件の証拠でも改ざんの経緯が推知され,開示の相当性がある」と指摘。「重大な違法がある場合には公訴棄却などの余地がないとは言えない」と述べた。【平成23年2月1日付/日経新聞/夕刊】
これは注目すべきニュースです。公訴棄却の可能性がある,というのは,公訴権乱用論を適用する可能性があるということです。「公訴権濫用論」とは、検察官の公訴提起に1)客観的な嫌疑が伴わない2)起訴猶予すべき事案である3)違法な捜査手続の結果なされた場合に,裁判を打ち切り,公訴を棄却するというものです。学説理論上認められているもので,最高裁でも第2の類型について適用があり得ることを示したものがあるだけです(しかも,極めて厳しい要件下で)。
今回の郵便不正事件では村木さんの無罪判決に見られるように,検察捜査に著しい違法があったと認定されています。第1類型の初判断になるかもしれません。