自由は奪えても美は奪えない

 古代ギリシャに、気品があり、美貌の高級娼婦「フリュネ」がいました。アテナイの高官を愛人に持ち、高額の報酬を得ていたフリュネは、やがて、フリュネに袖にされたモテない?実力者たちの反感を買い、不敬罪(神を冒涜する罪)で訴えられてしまいます。
 古代ギリシャでは、アレオパゴスというアテナイの小高い丘に政治司法を司る元老院機構が置かれ、そこで裁判も開かれていました。
 法廷に立ったフリュネの横に立つ弁護士は、プラトンの弟子とも言われる雄弁家ヒュペイデスでした。法廷で、フリュネを取り囲むようにして怪訝な顔でこの高級娼婦を睨みつける老獪な元老院たちの前で、果敢に弁論を試みるヒュペイデスでしたが、形勢不利と察するや、何とフリュネの衣服を剥ぎ取って全裸にし、「この美しさに罪を問えるのか!」と叫びます。
 その瞬間、法廷に、稲妻が落ちたような衝撃と緊張が走り、元老院たちは、全裸のフリュネに、畏れ、慄くほど神々しさを感じ、畏敬の念さえ覚えて、無罪を言い渡したのでした。
 この古代ギリシャの逸話を絵画「アレオパゴス会議のフリュネ」にしたのは、19世紀フランス画壇の巨匠ジャン・ジロームです。その名作は、今、ドイツのハンブルク美術館にあります。
 「美の創造の絶対性は、政治や社会、裁判すらそれに奉仕する役割、つまり下僕の役割しか与えられていない。」と言ったのは、三島由紀夫でしたが、司法に携わる者はこの言葉を肝にめいじ、決して傲慢になってはならないのです。権威ある判決によって自由は奪えても美は奪えないのです。

「その他」に関連する記事

指揮権発動とは

指揮権とは,個々の具体的事件の取り調べや処分に関して,法務大臣が検事総長に対して命令をして従わせる権限をいいます。検察庁法に規定があります。 どうしてこの指揮権というものがあるのかというと,国会の機関には,民主的基盤を有するものと,有しないものがあり ...

READ MORE

決裁が通らない!

検事に任官して最初の身柄事件であったシンナー事件は、検事として、あるいはより広く法律家として基本中の基本を学んだ事件だった。事案の詳細は忘れてしまったが、二人の若者が深夜路上で紙袋に入れたシンナー瓶を吸ってラリっていたところ、警ら中の警察官に職務質問 ...

READ MORE

司法試験「5年で3回」を「5年で5回」に緩和

今日は「司法試験制度」に関する記事です。      政府は、司法試験の受験回数制限を現行の「5年で3回」から「5年で5回」に緩和することを柱とした司法試験法改正案を、1月召集の通常国会に提出する方針を固めた。司法試験の合格者数の増加につながりそうだ。 ...

READ MORE

年頭にあたって(平成31年)

NICDの諸君へ 新年あけましておめでとうございます。 今年はNICD創立10周年の節目の年です。名古屋事務所もスタートします。世の中も変わるでしょう。新天皇陛下が即位し,元号も変わります。それでもNICDの弁護士そしてスタッフとして心掛けるべきこと ...

READ MORE
代表弁護士・元特捜検事 中村 勉
中村 勉 代表弁護士・元特捜検事

長年検事として刑事事件の捜査公判に携わった経験を有する弁護士と,そのスキルと精神を叩き込まれた優秀な複数の若手弁護士らで構成された刑事事件のブティックファームです。刑事事件に特化し,所内に自前の模擬法廷を備え,情状証人対策等も充実した質の高い刑事弁護サービスを提供します。

詳細はこちら
よく読まれている記事
カテゴリー